局所温熱療法が奏功した皮膚アルテルナリア症の1例

説明

68歳、男、画家。既往歴:脳梗塞。現病歴:平成12年9月に転倒し右前腕を負傷し一旦治癒したが、その3ヶ月後、同部位に紅色丘疹が出現し拡大した。他院で約5年間ステロイド外用治療を受けたが完治せず、平成17年8月29日に当院に受診した。初診時、右前腕伸側手首付近に10×6cm大、暗赤色米粒大の丘疹が融合した不規則な局面があり、表面は凹凸、顆粒状を呈していた。病理で表皮は全体的に萎縮し、真皮内に組織球および多核巨細胞、多核白血球の集塊から成る稠密な細胞浸潤が、一部の細胞質内に淡い褐色にそまる円形の菌要素がみられた。PAS染色では、菌の形態は、胞子,胞子連鎖、菌糸より成っていた。真菌培養では発育の速い、灰黒色、綿毛状の集落が形成された。スライド培養では、分生子柄の先に縦横に隔壁のはいった洋梨形の茶褐色の分生子が連鎖していた。以上より本菌をAlternaria属の菌と考えた。形態学的特徴と26S rRNA D1/D2領域の遺伝子解析よりAlternaria alternataと同定した。本症をAlternaria alternataによるPhaeohyphomycosis(褐色菌糸症)と診断した。切除植皮術を薦めたが患者が拒否したため、化学カイロによる局所温熱療法を行い10ヶ月で治癒した。併せてわが国における皮膚アルテルナリア症の報告例の特徴をまとめた。温熱療法は本症治療の一つとして有望であると考えた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205524287360
  • NII論文ID
    130006948434
  • DOI
    10.11534/jsmm.52.0.103.0
  • ISSN
    09164804
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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