高校野球メディカルサポートにおける投手への対応とその課題

DOI
  • 武井 健児
    群馬大学大学院医学系研究科 群馬大学医学部附属病院
  • 桜井 進一
    群馬大学大学院医学系研究科 医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 猪股 伸晃
    群馬大学大学院医学系研究科 医療法人高徳会上牧温泉病院
  • 福原 隆志
    群馬大学大学院医学系研究科 医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 中澤 理恵
    群馬大学医学部保健学科
  • 坂本 雅昭
    群馬大学大学院医学系研究科 群馬大学医学部保健学科
  • 富澤 渉
    群馬県高等学校野球連盟

書誌事項

タイトル別名
  • ―クーリングダウンでの調査から―

抄録

【はじめに】<BR>  我々は,群馬県高等学校野球連盟の依頼により,平成14年度から理学療法士(以下,PT)によるメディカルサポートを実施している。メディカルサポート中の投手クーリングダウンは,全国高等学校野球選手権群馬県大会(以下,夏季大会)において,試合後に各チームの投手に対し,PTが個別で15分程度の軽運動7項目,ストレッチング16項目を中心に実施してきた。<BR>  今回,平成14から20年度までの7年間の夏季大会における投手クーリングダウン時の調査から投手の肩・肘痛の傾向をまとめ,メディカルサポートの今後の課題を明らかにすることを目的とした。<BR> 【対象及び方法】<BR>  平成14から20年度の夏季大会(4回戦以降)においてクーリングダウンを実施した投手延べ282名(実数183名)を対象とした。調査項目は,肩・肘痛の有無(部位,誘発肢位),疲労度(Visual Analog Scale,以下VAS),投球数及び投球フォーム(オーバー,スリークォーター,サイド)とした。<BR> 【結果及び考察】<BR>  対応投手数延べ282名(実数183名)中,肩・肘痛を有した投手は延べ63名,22.3%(実数49名,26.8%)であった。痛みの部位は延べ75件中,肩関節22件,29.3%(水平内転時12件,外転外旋時10件),肘関節53件,70.6%(内側上顆33件,肘頭8件,外側上顆2件,全体2件,その他3件,不明11件)であった。<BR>  投球フォーム(調査未実施の平成14年度を除く)において,痛みのない投手延べ193名では,オーバー130名(67.4%),スリークォーター41名(21.2%),サイドスロー22名(11.4%)であった。痛みを有する投手延べ51名では,オーバー36名(70.6%),スリークォーター6名(11.8%),サイドスロー9名(17.6%)であり,痛みの有無と投球フォームの関係は認めなかった。<BR>  投球数では痛みのない投手は86.5±45.5球,痛みを有する投手は93.3±45.6球であった。疲労度では痛みのない投手は50.9±25.8mm,痛みを有する投手は60.1±21.0mmであり,有意差を認めた。<BR>  これまでのクーリングダウンは,ストレッチングのみでなく肩・肘の状況の確認を行ってきた。今回の結果から,現在の調査項目では投球後の肩・肘痛の評価項目としては不十分であることが分かった。これまで調査時の自由記載には痛みの有無に関わらず,上下肢のタイトネスの記載がみられた。本年度より評価の記載を積極的に促したところ,上下肢のタイトネスに関する記載が多くみられた。今後,上下肢タイトネス,肩甲骨アライメント,筋力などを調査項目に加え,クーリングダウン時の対応を障害予防として活用できるように改善することが必要と考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205525431680
  • NII論文ID
    130006949735
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.122.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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