健常者における座位姿勢の違いが主観的垂直認知に及ぼす影響

DOI
  • 万治 淳史
    埼玉みさと総合リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 網本 和
    首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
  • 諸持 修
    埼玉みさと総合リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 内田 亮太
    埼玉みさと総合リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 河方 けい
    埼玉みさと総合リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 大河内 真奈
    埼玉みさと総合リハビリテーション病院 リハビリテーション科

抄録

【はじめに】<BR>垂直性の認知は座位や立位での活動においてバランスを保つための基盤として重要な役割を果たしている.脳血管障害後症例においては垂直認知システムの障害により,座位・立位活動の回復の妨げとなることが多い.脳血管障害後のリハと座位姿勢の関連については特に骨盤の前後傾姿勢がバランスやリーチなどの能力と関連するとの報告がされており,垂直認知との関連についても言及されている.そこで本研究の目的は健常者における座位姿勢の違いが垂直認知に及ぼす影響を明らかにすることとした.<BR>【方法】<BR>対象は健常者14名(女性7名),平均25.7歳(23‐31歳),全例右利きであった.実験は座面板を前額面上で回転できる半円状のレールを座面板下部に取り付けた台座(Vertical Board:以下,VB)上で座らせ,身体を固定した.測定は検者がVBを15°傾斜させた位置から2°/秒の速さで反対方向に傾斜させていき,被験者が垂直だと感じた時点を確認し,その時点のVBの傾斜角度を角度計より記録した.測定条件は開眼(視覚性垂直:Subjective visual vertical;以下,SVV)と閉眼(身体性垂直:Subjective postural vertical;以下,SPV)の2条件,骨盤中間位(Neutral:以下N)と骨盤後傾位(Posterior Tilting:以下P)の2条件,これらを組み合わせた計4条件(開眼:SVV,閉眼:SPV,骨盤中間位:‐N,骨盤後傾位:‐P)とした.各条件の順序はランダムとした.各条件で4回,計16回の測定を行った.統計方法は垂直位からの偏倚値を従属変数,条件を要因とした反復測定分散分析および多重比較を用いて比較分析を行った.有意水準はp=0.05とし,統計にはSPSS.ver19を使用した.対象者には本研究参加に際し,口頭と書面にて研究内容の説明を行い,書面にて同意を得た上で実験を行った.<BR>【結果】<BR>各条件での垂直認知はSVV-N:1.7±0.6°(平均値±標準偏差),SPV-N:1.8±1.2°,SVV-P:2.5±1.0°,SPV-P:2.5±1.0°,であり,条件に有意な主効果が見られ(p<0.05),多重比較の結果,SVV-P・SPV-Pの2条件がSVV-N条件に対し,誤差が大きかった.<BR>【考察】<BR>結果より骨盤後傾条件でのSVV・SPVは骨盤中間位条件に比べ,垂直位からの誤差が大きかった.垂直認知については表在感覚や内臓感覚などの関与が報告されている.これら感覚器官の配列や位置的条件といった器質的な条件の変化によって垂直認知のための知覚に影響を与えることが示唆された.<BR>【まとめ】<BR>垂直認知に対し,座位姿勢の影響を明らかにすることで垂直認知の障害された患者に対する評価や治療を検討していくうえでの基礎的な知見として有用となる.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205525982080
  • NII論文ID
    130005451336
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_176
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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