ショルダーバッグ携帯時間の差が片脚重心動揺に与える影響

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抄録

【目的】<BR>日常生活でバッグを携帯する機会は多く,患者に対して身体に負担の少ない方法を提示することは重要である.先行研究ではショルダーバッグ(以下SB)携帯時の体幹・下肢筋活動に与える影響やSB携帯位置,重量が立位保持に及ぼす影響について報告されている.しかしながら携帯時間が姿勢制御や重心動揺に与える影響については十分に検討されていない.今回,予備研究として健常者を対象に携帯時間の差が片脚重心動揺に与える影響について報告する.<BR>【方法】<BR>予備調査として整形外科疾患患者20名を対象に日常使用するバッグについてアンケート実施.その結果より方法を規定した.対象は平均年齢25.5歳の整形外科疾患を有さない健常人4名.方法はSBを携帯しない状態で片脚重心動揺を計測し被験者全員右下肢を支持側とし開眼30秒を重心動揺計(ANIMA社製)で重心動揺(総軌跡長,単位面積軌跡長,外周面積)を計測した.その直後に重量3kgとしたSBを斜め掛けした状態で左体側に固定し片脚重心動揺を計測.更にSB携帯10分,30分後を計測した.計測終了までは室内移動は自由とし課題は設定していない.統計方法は携帯時間の差による重心動揺を一元配置分散分析にて行い有意水準5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>ヘルシンキ宣言に則り被験者には研究の趣旨と目的を十分に説明した上で参加の同意を得た.<BR>【結果】<BR>携帯時間差による総軌跡長,単位面積軌跡長,外周面積についてSB携帯なし,SB携帯直後,SB携帯10分後,SB携帯30分後では(P>0.05)と有意差は認められなかった.<BR>【考察】<BR>結果よりSB携帯なしと携帯直後,10分,30分後の経時的変化が健常人の片脚立位重心動揺に与える影響はないと示唆された.これついてはSB重量3kg,片脚立位保持時間30秒であり低負荷,短時間になったことが要因と考える.先行研究から片脚立位姿勢のパフォーマンス低下は筋疲労が原因と捉えられることが多いが片脚立位を30秒間維持できている間は姿勢保持筋の大きな筋力は必要なく,また最長30分間の立位,歩行を行うことで筋疲労に影響を及ぼすと考えたが,計測時間以外の規定はなく運動課題を詳細に設定していない為,筋疲労が生じにくかったと推測する.SBを体側横に固定した場合,体重10%以上の負荷が掛かると身体に影響を及ぼすと報告されているが本研究では体重3~4%程度の負荷であり影響はなかったと考える.しかしながら日常生活で体重10%以上のSBを携帯し長時間片脚立位や連続歩行を行うことは考えにくい.今後の課題は患者が日常生活で使用するバッグの重量,携帯時間,筋活動について詳細に検討し身体に負担の掛からない具体的な方法を提示する必要がある.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205526047232
  • NII論文ID
    130005451455
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_215
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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