慢性期頚髄損傷患者の疼痛に関する実態調査

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  • 住吉 司
    山梨厚生病院 リハビリテーション室

抄録

【はじめに】<BR>慢性期頸髄損傷患者では受傷後、数年経過後も疼痛が遷延することが多く、その多くは様々な療法に抵抗しているといわれる。そこで今回は、本院に入院している慢性期頸髄損傷患者がどのような疼痛を抱えているかその実態を調査することとした。<BR>【目的】<BR>慢性期頸髄損傷患者の疼痛について調査し、彼らが直面しているこれら疼痛の特徴を理解しようとするものである。<BR> 【対象】<BR>平成23年8月1日現在、本院入院中の頸髄損傷患者25名(女性1名を含む)平均年齢65.8±9.69歳、平均受傷後経過年数16.8±12.4ヶ年<BR>【説明と同意】<BR>調査は本院のプライバシーポリシーに基づき十分に説明し、同意を得た。<BR>【方法】<BR>面接調査にて択一回答、複数選択回答の計13問により疼痛の特徴を調査する。さらにその結果から頚髄損傷患者に特化すると考えられる疼痛と痙縮、麻痺領域における疼痛と痛みのタイプについてはそれぞれの関連を分割表ならびにフィッシャーの直接確立計算表により検討する。<BR>【結果】<BR>主な回答結果は以下の様であった。問0.疼痛があるか? ある25人中16人(以下、この16人からの回答結果)問1.生活に支障を来たすほどの疼痛があるか? ある16人中8人 問2. 生活に支障を来たすほどの痙縮があるか? ある16人中3人 問4.疼痛部位は? 損傷レベルより下位レベル(=麻痺領域)16人中5人、損傷部位レベルあるいは上位レベル(=残存領域)16人中11人 問5.疼痛のタイプは? 神経が障害され、自然発火でもしているような、痺れ痛のような痛み16人中14人、筋肉痛、関節痛的痛みあるいはそれ以外16人中2人であった。<BR>疼痛と痙縮の両者間、疼痛部位(麻痺領域か残存領域か)と痛みのタイプの両者間でいずれも統計的な関連は無かった。(P<0.05)<BR>また、問11.疼痛緩和に効果があった理学療法は? 温湿布 16人中7人、関節可動域練習 16人中3人、ストレッチ 16人中2人、アイシング 16人中1人、マッサージ 16人中1人であった。<BR>【考察】<BR>理学療法は頚髄損傷の麻痺領域に刺激を与えても無効であるとされる。今回、疼痛部位(麻痺領域か残存領域か)と疼痛のタイプの関連は無かった。しかし、問4.疼痛が残存レベルにあり問5.疼痛のタイプが筋肉痛、関節痛的痛みあるいは、それ以外と回答した2人に対する理学療法を考えたい。それらが廃用、過用等による筋、その他軟部組織性の痛みであるならば理学療法の適応を考えたい。また、疼痛との関連は無かったが生活に支障をきたすほどの痙縮があると回答した3人に関しても理学療法が必要と考える。さらに、問11.の回答で効果があった理学療法一つ一つに関して今後、検証を進めたいと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205526079744
  • NII論文ID
    130005451483
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_231
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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