家族hopeの帰結と退院先の関連性~脳血管障害患者に注目して~

DOI
  • 阿部 優実
    岩室リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 野口 涼太
    岩室リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 室橋 亜紗子
    岩室リハビリテーション病院 リハビリテーション部

抄録

【目的】<BR>脳血管障害患者(以下CVA患者)の退院先決定因子として,ADLレベル・心身機能・介護力・経済力・家屋環境等が先行研究で報告されているが,要介助者の在宅復帰には,家族の協力と家族hope(以下Fh)は不可欠と考える.そこで今回は,Fhの帰結が退院先に与える影響を明らかにする事を目的とし調査・検討を行った.<BR>【方法】<BR>平成22年4月~23年8月に当院回復期病棟を退院したCVA患者98名(平均75.0±10.4歳,男性50名,女性48名)を対象とし,対象者全員のFh・退院先・FIM(食事,排泄,移乗,運動・認知項目)・介護者の有無・移動レベルをカルテで後方視的に調査した.なお,本研究で使用した個人情報の取り扱いには十分注意した.統計処理は,2要因(Fh達成・未達成,在宅・施設)の関連性を2×2分割表で検討し,Fh達成群を対象に,Fh内容と退院先の関連性,介護者の有無をm×n分割表で検討した.さらに,対象者全員のFIM,移動レベルをマン・ホイットニ検定にて在宅群・施設群間で比較した.すべての統計処理で有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】<BR>Fh帰結と退院先に関連が認められた(Fh達成群40名:在宅32・施設8 未達成群58名:在宅29・施設29)が,Fh内容と退院先に関連は認められなかった.Fh内容は,排泄(Fhとした人数44‐達成人数24‐在宅復帰人数19)身辺動作(32‐7‐6)食事(8‐6‐4)歩行(7‐1‐1)移乗(4‐2‐2)その他復職等(3‐0‐0)との結果が得られた.FIM各項目,移動レベルで2群間(在宅・施設)を比較した結果,在宅群でFIM各項目平均値が高く,歩行自立者が多かった.日中介護者の有無と退院先に関連が認められた.<BR>【考察】<BR>Fh達成により在宅復帰の可能性は高くなるが,Fh未達成群の半数は在宅復帰しており,Fh達成が在宅復帰の必要条件とは言い難い.また,Fh内容は在宅復帰率に影響しない.Fh内容と帰結の傾向を比較すると,達成群では排泄動作自立,未達成群は身辺動作自立・復職等の内容が多く,未達成群は家族がより高い機能を要しているといえる.また,達成群ではFIM各項目平均値が高く,未達成群は低かった.未達成群の施設退院者では実際の患者と家族の望む機能レベルで差が生じている為,在宅復帰条件を満たせず在宅復帰が困難になっていると考えられる.Fhとは家族がADLレベル・心身機能・介護力・経済力・家屋環境等を反映した結果,在宅復帰条件として提示しているものであり,家族側が退院先を決定する判断因子の1つになると考える.今回, Fh達成によりCVA患者が在宅復帰出来る可能性が高くなり,退院決定因子の1つになることが示唆された.Fh達成を目標にアプローチする重要性が明らかになった.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205526125184
  • NII論文ID
    130005451513
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_206
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ