静的・動的バランスと身体特性について
説明
【目的】<BR>バランス能力の低下は、転倒リスクを高めることや不良姿勢により生じる疼痛の原因と考えられている。本研究の目的は静的・動的バランスに影響を与える身体特性を、身体組成・筋柔軟性・筋力の3点から調査する事である。<BR>【方法】<BR>対象は健常成人男性51名(年齢26.9±4.2歳、身長170.9±6.3cm、体重67.7±8.5kg)とした。バランス検査にはMedicapteurs製足圧分布測定装置Win-Podを使用した。静的バランス測定は、両足間距離を10cm、両側母趾MP関節と踵骨内側縁を平行に規定した。眼前2mの一点を注視した自然立位の足圧中心を測定し、足長にて正規化して重心前後位置を算出した。動的バランス測定は、同様の肢位より随意努力にて最大前傾位・後傾位・左方位・右方位の姿勢をとらせ、自然立位の足圧中心からの移動距離を計測し、身長にて正規化して重心移動距離を算出した。測定中は母趾球、小趾球、踵骨の3点の接地を条件とした。身体組成はBiospace社製InBody3.0を使用した。筋柔軟性は腸腰筋・大腿四頭筋・ハムストリングス・大腿筋膜張筋・下腿三頭筋を被験筋とした。筋力は等尺性膝伸展筋力(WBI:OG技研社製マスキュレーターGT160)と背筋力を測定し、船橋整形外科式体幹機能テストを用いて体幹機能を測定した。バランス検査と身体特性をそれぞれ比較検討した。統計処理にはSPSSver12.0のPearsonの相関係数を用い、有意水準は5%とした。なお、本研究は船橋整形外科グループ倫理委員会承認のもと、対象者に十分な説明をし、同意を得て実施した。<BR>【結果】<BR>重心前後位置は大腿四頭筋柔軟性と負の相関(r=0.298)があり、体幹機能と正の相関(r=0.300)が認められた。重心前後移動距離と両側のWBIと正の相関(蹴り足r=0.390、軸足r=0.309)があり、重心左右移動距離では軸足WBIと正の相関(r=0.318)が認められた。その他の身体特性との有意な相関は認めなかった。<BR>【考察】<BR>静的バランスでは大腿四頭筋柔軟性の低下により骨盤前傾位となり臀部は後方に偏移し、後方重心になり、体幹機能テストは高得点者ほど姿勢保持能力が高く前方に重心が偏移したと考えられる。前後の動的バランスは、諸家の報告同様に姿勢制御に働く筋力が影響していると考える。左右の動的バランスは軸足の筋力に影響し、習慣的な支持により軸足優位の重心移動となると考える。<BR>【まとめ】<BR>静的・動的バランスと身体特性を比較検討した。バランス能力には下肢筋力だけでなく、体幹機能と大腿四頭筋の柔軟性も関与していた。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 31 (0), 201-, 2012
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205526131968
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- NII論文ID
- 130005451519
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可