橈骨頭骨折を呈し,人工橈骨頭置換術を施行した症例を経験して-伸展制限の改善に着目して-

Description

【はじめに】<BR> 昨今,橈骨頭骨折の整復や固定の困難な症例に対し,人工橈骨頭置換術が施行されている.今回,この手術症例を経験し伸展制限の改善を中心に理学療法を実施したので以下に報告する.<BR>【症例紹介】<BR>症例は50歳代,女性.家庭内役割は主婦.現病歴は転倒受傷しMorrey分類のTypeⅢの右橈骨頭骨折と診断され,受傷8日後に右人工橈骨頭置換術を施行された.既往歴・合併症は特記事項なし.<BR>【理学所見】<BR>初回外来時ROM測定では肘関節屈曲110°伸展-45°回内60°回外45°.上腕二頭筋,上腕筋に伸張痛,手関節屈筋群に圧痛を認めた.術後5カ月のROM測定で肘関節屈曲140°伸展-10°回内80°回外85°で上腕二頭筋,円回内筋,手関節屈筋群に伸張痛,圧痛は残存も程度は軽減.Quick DASH:25点.<BR>【説明と同意】<BR>本症例に対し,発表の目的と内容を口頭により説明し同意を得た.<BR>【治療および経過】<BR>後療法は術後2週間ギプスシャーレ固定で伸展-45°までと回旋動作の制限2週後,ファンクショナルブレース装着し退院.術後4週から積極的なROM訓練許可となった.外来では週1,2回理学療法を介入した.初回外来時は積極的なROM訓練が出来ないため外側側副靭帯前部線維や内側側副靭帯前斜走線維上方部,前方関節包の伸張や上腕筋や上腕二頭筋のダイレクト・ストレッチングを中心に実施した.術後4週から積極的なROM訓練可能となり,防御性収縮に注意し上記に加えスタティック・ストレッチングを実施した.術後12週でのROM測定では屈曲115°伸展-20°回内75°回外80°に改善したが,伸展時に外反の増強が見られた.その後には重錘を用いた持続的伸張や円回内筋のストレッチングを追加した.<BR>【考察】<BR>本症例の伸展制限は伸張痛や圧痛,ROM測定時のEnd Feelから軟部組織性よりも筋性による制限で生じていると考え,理学療法は上腕二頭筋,上腕筋,円回内筋,手関節屈筋群にストレッチングを中心に実施した.その中でも伸展時に外反を呈することから円回内筋の短縮による影響が大きいと考えた.円回内筋に対しては触診でのダイレクト・ストレッチングに加え,選択的ストレッチングを実施した.その結果ROM拡大がみられた. 諸家の報告でも短期成績は優秀であるが完全伸展を獲得した症例は多くはない.しかし.術後5カ月で150日経過しているがEnd Feelは骨性でないことから筋に対するストレッチングに加えて前方関節包など軟部組織へのアプローチも考慮し,Dr.と相談の上完全伸展獲得を目標に介入を継続していきたい.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205526187520
  • NII Article ID
    130005451332
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_132
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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