肩甲骨の可動性とバランス能力の関係性~徒手的介入による検討~

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【目的】臨床場面において肩甲骨に介入した際に、立位バランスの中で体幹の活動や運動パターンが変化することを多く経験する。そこで、今回は徒手的に肩甲骨の可動性に介入した場合バランス能力にどのような変化が生じるのかを検証することを目的とした。 【方法】対象は本研究に同意の得られた若年健常成人男性6名(平均年齢20.8±1.72歳)とした。実験方法は肩甲骨の可動域測定と重心動揺計測を実施し検討した。肩甲骨の可動域測定は端座位にて体幹伸展を保持させ、他動的に肩甲骨を挙上・下制・内転・外転方向へ動かし、経皮的にメジャーを用いて行った。各測定の詳細は1)挙上・下制はTh3棘突起の高さを基準とし、肩甲棘三角までの移動範囲、2)内転・外転は肩甲棘三角からTh3棘突起を通る座面からの垂線までの距離とした。重心動揺計測はActive Balancer EAB-100 (酒井医療社製)を用い、サンプリング周波数20Hzにて以下の2条件に対し30秒計測した。静的バランス検査として両側踵骨中心間距離を10cmとした開閉眼立位、開眼片脚立位の総軌跡長・外周面積・矩形面積・単位面積軌跡長を計測した。また、動的バランス検査として対象者に口頭指示により最大に前後・左右へ重心移動を行い移動距離の計測をした。徒手的介入としては端座位にて被検者の肩甲骨を内外転方向、挙上下制方向へ各々2分間、それぞれ定速7m/sにて肩甲胸郭関節の可動域訓練を行った。統計学的手法は、静的バランス検査ではKruskal Wallis H-test後に多重比較を行い、動的バランス検査では各条件下ではMann-Whitney U-testを行った。なお有意水準は5%未満とした。 【結果】肩甲骨の可動域増大と随意最大前方重心移動時の左右動揺距離との負の相関がみられ、両者の関連性が示唆された。 【考察】本研究において、肩甲骨可動性の増大と前後方向への随意運動時の左右重心移動距離に負の相関関係が認められたことは、肩甲帯周囲部の感覚モダリティが身体随意運動での重心集約への一助に関連していることが確認された。特に随意運動の身体重心の側方補正について影響を及ぼし、先行研究から体幹・下肢帯を中心とした関節可動性や筋活動におけるバランス能力への寄与の他、肩甲骨の可動性が動的バランス能力に影響を及ぼす可能性が考えられた。〈BR〉そのため、姿勢調整障害への理学療法として、肩甲骨の可動性は治療対象と成りえることが考えられた。 【まとめ】今回の研究では肩甲骨の可動性の変化によって、随意最大前方移動時の側方動揺の動的バランスが変化することが示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205527265792
  • NII Article ID
    130006950383
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.29.0.157.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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