体幹筋と下肢筋の運動順序の違いによる下肢伸展挙上運動への影響

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抄録

【目的】<BR> 臨床において体幹と下肢の運動の組み合わせ方で、下肢の挙上が容易になることや歩行速度が向上することがある。また、筋力や筋の収縮速度など、体幹筋と四肢筋が相互に影響するという報告は多いが、体幹筋と四肢筋の運動順序の違いに関する報告は少ない。そこで今回、体幹筋と下肢筋の運動順序の違いに着目して下肢伸展挙上運動(以下SLR)への影響を検証した。<BR> 【方法】<BR> 対象は本研究に同意が得られた健常成人20名(平均年齢24.9±1.4歳)とした。<BR> 方法は、運動の実施条件を安静臥床5分(以下条件A)、体幹筋の運動をした後に下肢筋の運動を行う(以下条件B)、下肢筋の運動をした後に体幹筋の運動を行う(以下条件C)という3つに設定した。対象者は日を変えランダムに3条件を実施した。運動効果の指標は、各条件前後に股関節屈曲15°のSLRを左右交互に最大速度で40回実施した所要時間とした。体幹筋の運動方法は、膝立て臥位で水銀血圧計マンシェットを両側上後腸骨棘に当て、60mmHgと120mmHgを交互に3秒間保持するよう各20回実施した。下肢筋の運動方法は、膝立て臥位で膝関節屈曲90°となるよう設定し、膝関節伸展0°を3秒間保持するよう左右交互に20回実施した。統計処理は、各条件前後の比較はt検定、条件間の比較は運動前の所要時間を100%として運動後の変化率を算出し、一元配置の分散分析後に多重比較検定を用いた。有意水準は5%未満とした。<BR> 【結果】<BR> 各条件前後のSLR所要時間の比較においては、全ての条件でSLR所要時間が短縮し、条件Bと条件Cにそれぞれ有意差を認めた(p<0.01)。各条件の変化率は、条件Aは98.4±4.9%、条件Bは94.6±7.3%、条件Cは93.9±4.2%となり、条件Aと条件Cの間に有意差を認めた(p<0.05)。<BR> 【考察】<BR> SLR所要時間は条件B・Cにおいてそれぞれ短縮したが、双方の間に有意差は認められなかった。このことより、今回の実験においては運動順序の違いによるSLR所要時間への影響は少なく、事前に運動を行う重要性が再確認された。事前に運動したことで筋線維の粘弾性や筋の収縮速度が向上したと考えられる。更に、運動の過程に四肢の動作に対する先行的収縮の向上や脊柱と骨盤の安定性向上が報告されている体幹筋の運動を取り入れたことで、条件B・C共に同等の効果を得たと考える。条件A・C間に有意差を認めたことについては、目的とする運動の直前に体幹筋の運動を行う運動順序の方が、体幹筋の運動単位の動員数が増加し、安定性の高い状態で次の運動が出来る傾向があると考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205527441664
  • NII論文ID
    130006950426
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.29.0.62.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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