地域健常高齢者に対するBalance Evaluation Systems Test (BESTest)の使用経験
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説明
【目的】 Horakらは、2009年に新しいバランス評価法としてBalance Evaluation Systems Test (以下BESTest) を考案し報告した。BESTestは、27の課題で構成され、その課題内容から、1.生体力学的制限、2.安定性限界、3.姿勢変化・予測的姿勢制御、4.反応的姿勢制御、5.感覚機能、6.歩行の安定性、の6セクションに分類され、包括的かつ要素別にバランスの問題を抽出できるという特徴を有する総得点108点の評価法である。しかしながら高齢者における実際の使用経験や易転倒性の評価に用いることが可能かなどについてはまだ十分に検討されていない。そこで、今回地域在住高齢者に対し、BESTestを実施し、高齢者における得点の特徴および転倒歴との関連を検討した。<BR> 【方法】 地域健常高齢者33名、平均年齢67.4歳±5.1を対象とした。問診にて転倒歴を含む一般情報を聴取後、BESTestを施行した。解析項目として、BESTestの総合点および各セクションごとの平均点数(得点率)を算出した。さらに転倒群(n=8、平均年齢69.4歳)と非転倒群(n=25、平均年齢66.8歳)の2群間における得点の比較を行った。統計処理は、Wilcoxonの順位和検定を使用し、有意水準を5%とした。なお、本研究は当院の倫理委員会の承認を得たうえで実施し、対象者には事前に本研究の主旨を十分に説明し、書面にて同意を得ている。<BR> 【結果】 BESTestの総得点の平均点(得点率)は、100.0(92.6%)であり満点者は認めなかった。各セクションごとの平均点は、1は14.6(98%)、2は18.7(89%)、3は17.2(96%)、4は16.0(89%)、5は14.8(99%)、6は18.7(89%)であった。転倒群と非転倒群の比較では、総得点は、転倒群97.5(90.3%)、非転倒群100.8(93.3%)であり、有意差は認めなかった。また、各セクション間ごとの2群間の比較では、3の「姿勢変化・予測的姿勢制御」において、転倒群16.1(89%)、非転倒群17.5(97%)で有意に転倒群で低値であった(p<0.01)。<BR> 【考察】 従来から広く用いられている包括的なバランス評価であるBerg Balance Scale (BBS) やPerformance Oriented Mobility Assessment (POMA) などは、地域健常高齢者では天井効果を有し、問題点が抽出困難であることが指摘されている。一方、今回のBESTestによる検討では、全体としては得点率は92.6%であり満点者はなく、「安定性限界」、「反応的姿勢制御」、「歩行の安定性」のセクションで得点が低下するなど高齢者の特徴が抽出できた。また、転倒群では、「姿勢変化・予測的姿勢制御」で有意に低値であり、易転倒性に伴うバランスの問題を判別した。従って、BESTesetは地域在住高齢者においても加齢に伴う変化や易転倒性のバランス能力の問題点が抽出できるすぐれた評価法である可能性が示唆された。<BR>
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 29 (0), 228-228, 2010
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205527640832
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- NII論文ID
- 130006950506
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可