肘内側側副靭帯損傷患者における投球動作と身体能力の関連性

DOI

抄録

【はじめに】<BR>当院では,投球障害の患者に対し投球動作のチェックと独自に作成した身体能力のテストを実施し,チェック後にフォーム指導も実施しているが,投球動作が技術に起因するのか身体能力に起因するのか疑問である.今回,投球動作と身体能力の関連性について検討したため報告する.<BR>【対象】<BR>平成21年3月〜平成22年1月に肘関節内側側副靭帯再建術を施行した14名,平均年齢18.2±4.5歳,全例男性とした.投球動作のチェックは術前に行い,疼痛により満足に投球動作を行えないものは除外した.<BR>【方法】<BR>投球動作のチェックは,三次元動作分析装置を用いて前方・後方・側方(2方向)より撮影し,各投球相にて独自に作成した基準で10項目を評価した.身体能力のテストは,5項目(下肢機能,バランス能力,上肢筋力,下肢筋力,体幹筋力)に分類される7種目(片脚スクワット,バランスボール,バランスディスク,リストカール,股割,サイドブリッジ,フロントブリッジ)を実施し点数化した.投球動作と身体能力の関連性は,各相のチェック項目に対して良好群と不良群に分類し,各群の身体能力の点数を比較した.統計処理にはMann-Whitney U検定を用いた.<BR>【結果】<BR>Early cocking時におけるステップと下肢機能は,良好群(neutral-step)では下肢機能点数6.0±2.5,不良群(in-stepおよびout-step)では下肢機能点数2.8±1.8であり,両群の下肢機能点数に有意差を認めた.Ball release時における肩-肩-肘ライン(以下SSEライン)とバランス能力は,良好群(SSEラインが一直線)ではバランス能力点数4.6±3.4,不良群(SSEラインが一直線ではない)ではバランス能力点数1.3±1.4であり,両群のバランス能力点数に有意差を認めた.<BR>【考察】<BR>投球動作と身体能力の関連性を認めたものは10項目中2項目であった.Early cocking時におけるステップは,下肢機能のWind-up時の安定性およびWind-upからのスクワット動作に起因すると考えられた.Ball release時におけるSSEラインは,Ball releaseはリーチ動作であるため投球肢より中枢の安定性が重要となり,バランス能力で反映される体幹や下肢の協調性に左右されると考えられた.また,投球障害に代表される肘下がりは,身体能力と関連性を認めなかった.本研究の結果より,身体能力が反映されない項目に関しては患者に事象を認知してもらうことが重要と考えられた.しかし,本研究は症例数や方法に多くの課題があるため今後検討を重ねていきたい.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205527984000
  • NII論文ID
    130006950671
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.335.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ