呼吸機能と脊柱変形との関係

DOI
  • 渡邉 祐基
    介護老人保健施設セントラル大田 リハビリ科

抄録

【目的】<BR> 高齢者の多くが年齢を重ねるにつれて骨折や退行性の変化によって円背となる人が多くなる。円背となることで胸郭の拡張が制限されるため呼吸にも影響を及ぼすと考えた。実際の年齢と肺年齢を比較して円背が及ぼす呼吸機能の低下の検証をした。<BR> 【方法】<BR>  対象は入所している男性17名、女性45名ならびにデイサービスに通う男性6名、女性17名の計85名を対象に行った(男性27%、女性73% n=85 平均年齢84.04±SD8.79)。測定項目は自在定規を用いて上部後弯角・下部後弯角を、スパイロメーターを用いて一秒量を測定した。その他の情報として年齢・身長を測定し、肺年齢を算出した。自在定規を用いて第4胸椎・第12胸椎・第1仙椎それぞれにマーカーをし、後面・側面からカメラで撮影。上部後弯角は第4胸椎の接線と第12胸椎の接線のなす角度とし、下部後弯角は第12胸椎の接線と第1仙椎の接線のなす角度とした。<BR> 【結果】<BR>  統計学的分析にはピアソンの相関係数を用いて肺年齢・暦年齢・一秒量・上部後弯角・下部後弯角それぞれの相関を見た。最も相関が見られたのは暦年齢と一秒量・肺年齢と一秒量・下部後弯角と一秒量であった。次に相関が見られたのは暦年齢と下部後弯角であった。<BR> 【考察】<BR>  肺年齢・暦年齢はともに一秒量との相関があるが。肺は年齢とともに老化が進み、肺の弾性が低下して残気量が増え、吸気量が少なくなり、新鮮な空気を十分に取り入れることが出来なくなる。老化とともに上部後弯角より下部後弯角が大きくなるのは、脊柱の可動性が胸椎よりも腰椎の方が大きいため、機械的負荷によって椎間板がすり減ってしまったり、圧迫骨折などが起きやすくなることが原因と考えられる。 また一秒量と下部後弯角が相関を示すのは、一秒量測定に要する努力性の呼気に腹筋群が呼吸補助筋として使われることと関係しているので、下部後弯角が大きくなることで腹筋群が作用しなくなり、一秒量が低下し、ひいては肺年齢が低下することになると考えられる。<BR> 【結語】<BR>  老化とともに生ずる脊柱後弯は呼吸機能の低下の一因となり得ると考えられる。脊柱後弯は上部よりも下部の方が強くなる傾向があり、腹筋群の活動を低下させ、肺年齢の主要因子である一秒量に影響を与えることになる。肺年齢は呼吸器疾患に対する予防と治療の重要性に対する認識を促し、予防や治療説明の患者教育に有用なものであり、肺理学療法など早期の介入の面からも有用であると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528014336
  • NII論文ID
    130006950690
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.343.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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