2つの異なる握力訓練における訓練効果の比較検討~橈側手根伸筋の筋活動に着目して~

DOI
  • 源 裕介
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科
  • 長谷川 彰子
    千葉こどもとおとなの整形外科 リハビリテーション科

抄録

【目的】<BR>握力発揮時の橈側手根伸筋(以下ECR)は手関節の固定に働いており、また強い握力動作に応じてECRは強い筋活動を起こすという報告が散見される。これにより、握力訓練を行う際はECRの筋活動を意識した訓練を行うべきであると提唱されているが、その方法についての研究報告は少ない。今回2つの異なる握力訓練方法を考え、表面筋電計によるECR筋活動の測定と、2ヶ月間の握力訓練を実施し、その結果からECRの筋活動は握力訓練効果に関係があるかを比較検討した。<BR>【方法】<BR>方法は、ボール群と新聞紙群の2種類を用意した。<BR>ボール群は、直径6cmのゴム製のボールを使用し、前腕回内位、手関節軽度背屈位でボールを把持し、強く握る動作を行った。新聞紙群は、新聞紙1枚を用いて前腕回内位、手関節軽度背屈位で新聞紙を中央から把持し新聞紙を丸めて球体を作っていく動作を行った。<BR>表面筋電計の計測では、被験者9名(健常者男性4名・健常者女性5名・平均年齢25.11±3.37)のECRに電極を貼付し、2つの方法を3分間実施した際の計測を行った。表面筋電計は酒井医療製TELEMYOG2を使用し、測定したデータの平均振幅を2群間で比較し、統計処理は対応のあるt検定(有意水準5%)を行った。<BR>握力訓練は、被験者8名(健常者男性4名・健常者女性4名・平均年齢24.5±3.02)でボール群(男性2名・女性2名)と新聞紙群(男性2名・女性2名)に分かれ、各訓練を1回で3分間、1日2回、2ヶ月間実施した。筋力測定はスメドレー式ハンドダイナモメーターを用いて初回-最終、初回-1ヶ月、1ヶ月-2ヶ月の増加率を算出し2群間で比較した。<BR>なお実験に先立ち,対象者には研究内容について口頭にて十分に説明を行い、同意を得た。<BR>【結果】<BR>筋電図における平均振幅は、新聞紙群の方が活動電位の高値を示し有意差も認められた。また握力訓練での増加率は、初回-最終でボール群が14%、新聞紙群が16%とわずかに新聞紙群でわずかに効果が高かった。しかし、1ヶ月-2ヶ月ではボール群がわずか0.6%の増加率に対し、新聞紙群は6%と訓練効果に差が見られた。<BR>【考察】<BR>今回の結果より両群の差はわずかであったが、1ヶ月-2ヶ月の効果をみると新聞紙群の方で効果が高いことから、新聞紙群はボール群より長期的な訓練効果が期待できると考えられた。これにより、ECRの筋活動は少なくとも訓練効果に関与していると考えられた。<BR>【まとめ】<BR>今回握力訓練の効果をECRの筋活動に着目して検討した。結果はECRの筋活動が有意に高かった新聞紙群でわずかに訓練効果が高かった。しかし、その有効性を示す要素はまだ不十分であるため、今後の検討課題となった。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528129664
  • NII論文ID
    130005451550
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_87
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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