疼痛を有した回復遅延型ギランバレー症候群の回復初期段階における運動療法

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説明

【はじめに】<BR>  ギランバレー症候群は比較的予後良好で、その介入方法としては関節可動域訓練、筋力増強訓練、基本動作訓練が代表的である。しかし重症例の回復初期における運動療法を具体的に紹介するものはほとんど認められない。 本症例は重度四肢麻痺および強い疼痛を呈していたが、プレーシングを中心とした運動療法により、疼痛消失、筋力向上、関節可動域改善が図れ、現在動作訓練などより積極的な訓練が行えるようになった。そこで今回、重症例の回復初期の運動療法を経験したので報告する。<BR> 【症例紹介】<BR>  47歳女性。H20.7.8下痢症状、7.13四肢脱力感出現し、翌日入院。γグロブリン療法施行。7.15四肢麻痺出現。抗GM1(4+)。7.18ベッドサイドよりリハビリ開始。頭頚部・肩甲帯MMT1-2。その他は0。リハビリ開始3週目に、両手部に腫脹出現。四肢疼痛出現。9.3リハビリ目的にて当院に転入院。当院での初期評価では上肢の関節可動域制限が大きく(肩関節屈曲・外転60°、肘関節屈曲80°、手指屈曲20°)、頭頚部・肩甲帯・骨盤帯MMT2、四肢0-1。両手部腫脹あり。四肢他動運動時、強い疼痛あり。その他基本動作・日常生活動作全介助。<BR> 【介入と経過】<BR>  介入法はプレーシングとし、以下の4つのことを考え行った。1.定位する中で比較的回復しやすい近位筋の活性化を狙う。2.関節運動を意識させ、重力を利用し、できる限り能動的に行わせる。3.単に関節運動を行わせるのではなく、課題を明確にして行う。4.触覚刺激を利用しながら関節可動域の改善を図る。その結果、頭頚部・肩甲帯MMT3、上肢近位筋2-3、下肢近位筋2。肩関節屈曲100°、肘関節屈曲120°に改善。両手部の腫脹・疼痛消失(介入2ヶ月)。能力的には寝返り、端坐位自立、寄りかかり立位監視、移乗動作中等度介助、車椅子駆動100m可(介入5ヶ月)。<BR> 【考察】<BR>  本症例は重度四肢麻痺、疼痛のため、一般的な筋力増強訓練や関節可動域訓練が行えなかった。しかし視覚の利用や運動を知覚させながらプレーシングをした際は疼痛が生じにくかった。これは能動的に運動させるように働きかけたことで、疼痛において下行性抑制が生じた可能性が考えられる。さらにプレーシングによって自律的な筋活動を促通したことで筋力向上が図れたと考えられる。重度四肢麻痺や疼痛を呈する場合、消極的かつ他動的な訓練となりがちだが、本症例においては単なる他動ではなく能動的に働きかけたことで、疼痛消失、機能改善、さらには能力向上につながった。故にギランバレー症候群の運動療法の一つとしてプレーシングの有効性が示唆される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528297088
  • NII論文ID
    130006950765
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.142.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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