下腿三頭筋の筋構造の特徴
書誌事項
- タイトル別名
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- ―肉ばなれ発生部位との関連について―
説明
【目的】<BR>下腿三頭筋の肉ばなれはハムストリングスに続いて多く,腓腹筋内側頭の筋腱移行部に集中している.今回,下腿三頭筋について肉眼解剖学的に筋構造を明らかにし,肉ばなれ発生部位との関連を検討した.<BR> 【方法】<BR>日本歯科大学新潟生命歯学部に献体された日本人遺体5体,10側を用いた.検索方法は主に肉眼解剖学的手法を用いた.<BR> 【説明と同意】<BR>本研究の解剖体は,死体解剖保存法ならびに献体法に基づき教育と研究のために大学に献体されたものである.<BR> 【結果】<BR>下腿三頭筋は腓腹筋の内・外側頭とヒラメ筋により構成されており,腓腹筋は大腿骨内・外側上顆から,ヒラメ筋は腓骨頭の後面とヒラメ筋腱弓から起こりアキレス腱を介して踵骨隆起に停止した.腓腹筋の起始腱は筋腹の表面(皮膚側面)を,停止腱は筋腹の裏面(骨側面)を覆った.内側頭の方が外側頭に比べて筋腹は大きく,両頭ともに羽状構造を呈した.ヒラメ筋の停止腱膜は筋腹の表面のほぼ全域を覆い,裏面にはアキレス腱から分岐した停止腱が筋腹の近位端付近まで存在した.起始腱膜は停止腱膜の外側方と内側方に存在した.ヒラメ筋の筋線維は外側縁と内側縁から筋腹の長軸方向にほぼ直行する方向に走行し,裏面では筋線維が停止腱の内側方と外側方に停止し羽状構造を呈した.ヒラメ筋の構造には様々なバリエーションを認めた.腓腹筋の停止するアキレス腱は外側にねじれながら踵骨隆起外側2/3に付着した.腓腹筋内側頭の停止するアキレス腱は踵骨隆起表層に,外側頭の停止するアキレス腱はその深層に折りたたまれる様に付着した.内側頭の停止するアキレス腱のほうが外側頭の停止するアキレス腱よりも厚く,踵骨隆起に多く付着した.ヒラメ筋の停止するアキレス腱は外側にねじれながら踵骨隆起内側2/3に付着した.アキレス腱のねじれ構造は10側全てに認めた.<BR> 【考察】<BR>肉ばなれの好発部位である腓腹筋内側頭は羽状筋であり,ストップ動作などの膝関節伸展位で足関節を背屈するような場合に大きな負荷がかかり損傷するといわれている.今回の結果では,アキレス腱は単純な直線構造ではなくねじれ・折りたたみ構造を呈していた.足関節・足部の関節運動は複合運動であり,この複雑な動きに対応するための構造ではないかと推察された.腓腹筋内側頭の停止するアキレス腱は外側頭の停止するアキレス腱よりも厚く,踵骨隆起に多く付着すること,またねじれ・折りたたみ構造を呈していることで足部母指球に有意に荷重させ,膝関節伸展と足関節背屈を強制すると内側頭の停止するアキレス腱に特に張力が加わることが推察された.この構造上の特徴が内側頭の肉ばなれの発生に関与しているのではないかと考えられた.
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 30 (0), 263-263, 2011
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205528568192
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- NII論文ID
- 130006950809
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可