足関節脱臼骨折を呈し、全荷重開始後荷重時痛が生じた一症例

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抄録

【目的】<BR>  足関節脱臼骨折はankle mortiseの破綻により足関節の不安性を生じやすく、変形性関節症に移行するという報告が多い。また足関節・足部の関節運動は小さいが、機能的安定性と機能的運動性が組み合わさることで関節全体として重要な部位となる。今回、足関節の関節不安定性により荷重時痛が生じていた症例に対し、理学療法を行い歩容の改善が得られたので報告する。<BR> 【症例紹介】<BR>  58歳、女性、自転車走行中バランスを崩して転倒し受傷。右足関節脱臼骨折(Lauge-Hansen分類SAII型)と診断され、観血的整復固定術施行。術後22日1/3部分荷重開始、術後29日1/2部分荷重開始、術後36日2/3部分荷重開始。術後40日退院し、術後43日外来リハにて全荷重開始。術後145日リハビリ終了となる。<BR>  尚、本症例には症例報告させていただく主旨を説明し同意を得た。<BR> 【理学療法経過】<BR>  術後7日よりRICE処置、持続的他動運動訓練、動的関節制動訓練開始。術後14日より右下肢免荷両松葉杖歩行訓練、足関節可動域訓練開始。術後22日より荷重練習開始。<BR> 【初期評価:術後50日(外来リハ)】<BR>  疼痛:患側立脚中期から後期にかけ内果部周辺 VAS4/10<BR>  足関節ROM-t (Rt/Lt):背屈25/45、底屈65/65、外返し0/20、内返し40/65<BR>  MMT:足関節底屈、足趾屈曲・伸展 3、足関節背屈 4<BR>  歩行:足部内反位における踵外側接地から始まり、足底接地から立脚中期にかけ後足部は回外位となる。立脚後期は下腿内旋し、小指側からtoe offとなる。<BR> 【最終評価:術後145日(外来リハ)】<BR>  疼痛:立脚初期に内果部周辺VAS1~2/10<BR>  足関節ROM-t (Rt/Lt):背屈40/45、外返し10/20、内返し65/65<BR>  MMT:足関節底背屈、足趾屈曲・伸展 5<BR>  歩行: 足底接地から立脚中期において足部内反が減少し、後足部中間位にて足趾全体でtoe offとなる。<BR> 【考察】<BR>  本症例は炎症期間が長く生じており、関節包内の浸透液が増大し、軟部組織・皮下組織の癒着が生じていた。それにより関節可動域制限が生じ、後脛骨筋や足関節・足趾の底屈筋力が低下し、筋伸長の低下により距腿関節のアライメント不良が生じていた。さらに荷重により後足部のアライメントが内反に変位し、脛腓間解離によって距腿関節間の圧縮ストレスが生じたことで荷重時痛が生じたと考えられた。そこで軟部組織モビライゼーションやストレッチなどの徒手療法を行い、関節可動域改善を図った。そして足関節底屈筋群の筋力トレーニングを行い、足関節の協調訓練を目的として不安定盤を使用したステップ練習を実施した。それにより足底接地から立脚中期では後足部の回外が減少し、足部内反位荷重による距腿関節外側面への圧縮ストレスが軽減したことで、荷重時痛軽減につながった。また歩行時おける膝の代償動作も軽減し、二次的機能障害の予防もできた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528602368
  • NII論文ID
    130006950834
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.304.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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