頸椎症性脊髄症を伴う成人アテトーゼ型脳性麻痺者の起居・移動動作の自立度変化

DOI
  • 田中 好実
    横浜市総合リハビリテーションセンター 理学作業療法課
  • 藤井 智
    横浜市総合リハビリテーションセンター 理学作業療法課
  • 桑村 和子
    横浜市総合リハビリテーションセンター 理学作業療法課
  • 山崎 哲司
    横浜市総合リハビリテーションセンター 理学作業療法課
  • 山本 裕子
    横浜市総合リハビリテーションセンター 理学作業療法課

書誌事項

タイトル別名
  • -日常生活動作での向上を視野に入れて-

抄録

【はじめに】<BR> 頚椎症性脊髄症のアテトーゼ型脳性麻痺者における理学療法(以下PTと称す)と生活状況の変化について示した報告は少ない。今回、1年間のPTの経過と日常生活における自立度の変化を一症例にて報告する。<BR> 【症例紹介】<BR> 症例は47歳女性。ADLは自立で、一部家事も行っていたが、急激に身体機能が低下しADL全般に介助を要す状態となった。その後3ヶ月経過した時点で当センターに来所し、週に1回の頻度で外来PTを実施した。<BR> 【介入時評価】<BR> 筋緊張はMAS上肢2、下肢2~1+。疼痛はVASで、上肢(利き手)90mm下肢65mmであった。腰椎過伸展・胸椎屈曲位で伸展方向への運動を強めながら動作を行い、特に頚椎が過伸展・右回旋になると強いしびれが生じ、動作が緩慢になる傾向にあった。起居・移動動作は起き上がりが全介助、椅子からの立ち上がりは後方に重心が残り,中等度介助であった。伝い歩きは支持物に体幹部を寄り掛かけ、さらに両上肢を支持に使い、PT場面で軽介助、生活場面で中等度介助であった。食事は朝食のみ自立で、居室の椅子に座ったままの生活で,Motor FIMは31点であった。<BR> 【経過】<BR> 著明な頸椎の過伸展・右回旋が出現しないよう意識し、重心位置を調整しながら抗重力活動を促し反復練習を行った。加えて自宅でも高齢介護者である父が実施できる方法を指導した。例えば,立ち上がりは、伸展パターンを強め足底に荷重が困難であったため、側方介助だけでなく前方の机に手を付く方法を指導した。さらに、起き上がりには電動ベッドを導入し、背上げを使用した方法を指導した。1年後、起居・移動動作を示す。プラットホームでの起き上がりは中等度介助、立ち上がりと伝い歩きは修正自立であり、伝い歩きは体幹部の支持なし、右上肢の支持のみで可能となった。生活場面での起き上がり、伝い歩きは修正自立~軽介助であった。食事は3食とも自立となり、地域活動ホームにも参加するようになった。Motor FIMは41点と向上した。筋緊張はMAS上肢1+下肢1~1+となり、疼痛はVAS下肢30mm上肢57mmであった。<BR> 【考察】<BR> 本症例は、頚椎の過剰な動きなどにより四肢の疼痛を助長していることで動作能力が低下し、加えて廃用が生じていたと思われる。PTでは、動作を緩慢にする頸椎の動きを避け、重心位置を調整した動作を身につけることが有効だと思われた。これらは、PT場面だけでなく、生活場面の中でも無理のない範囲で指導していくことも重要だと考える。また、動作の改善や定着の見極めには一定程度の期間を踏まえておくことも必要だと思われる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528607104
  • NII論文ID
    130006950841
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.310.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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