妊婦の起立から歩行移行時におけるバイオメカニクス

DOI
  • 須永 康代
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科
  • 国分 貴徳
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科
  • 木戸 聡史
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科
  • 阿南 雅也
    広島大学大学院 保健学研究科心身機能生活制御科学講座
  • 新小田 幸一
    広島大学大学院 保健学研究科心身機能生活制御科学講座

抄録

【目的】<BR>妊娠中の腹部の重量・容積増大は身体重心(COM)に影響を及ぼし、姿勢不安定性が増すため転倒リスクの増大が懸念される。本研究は妊婦の起立から歩行以降時の動作様式解明を目的とした。<BR>【方法】<BR>対象は妊婦群12名(30.1±4.0歳)とコントロール群の未経産女性10名(31.2±3.0歳)で、妊婦群は妊娠16-18週、24-25週、32-33週に計測を実施した。対象者は椅子から起立し前方へ歩く動作を3回試行し、デジタルビデオカメラ(Sony社製 DCR-DVD508)により矢状面から撮影した。動画編集ソフトウェアVirtual Dub Mod(Virtual Dub Modプロジェクト製)にて連続静止画に変換後、画像解析ソフトウェア Image J 1.43(NIH製)により体表に貼付した標点マーカーの空間座標を同定し、Microsoft Excel上で1歩目遊脚肢の足尖離地(swing-off)時の体幹・下肢関節の角度、鉛直方向のCOM座標を算出し、一元配置分散分析を行った。有意水準はp<0.05を採用した。また、動作開始からswing-offまでの鉛直方向座標(Az)の位相面解析を行った。本研究は埼玉県立大学倫理委員会の承認を得、対象者に研究目的と内容について説明し同意を得て実施した。<BR>【結果】<BR>妊婦群の離殿からswing-offまでの動作時間は、計測1回目は0.82±0.27sでコントロール群の0.50±0.18sより有意に長かった(p<0.05)。swing-off時の体幹屈曲角度は計測1回目は7.7±4.9°、2回目は9.2±5.5°、3回目は11.3±5.4°でコントロール群の22.6±8.0°より有意に小さかった(p<0.05)。股関節屈曲角度は計測1回目は31.6±7.2°、2回目は32.7±10.6°でコントロール群の49.1±13.4°より有意に小さかった(p<0.05)。膝・足関節角度、鉛直方向のCOM座標は両群間に有意差は認めなかった。swing-offまでのAzの1階時間微分(dAz/dt)値は、計測1回目で小さく、swing-off時にAzが一旦収束した後に歩行を始めたが、2回目以降はコントロール群と同様に収束しないまま歩行へと移行していた。<BR>【考察】<BR>妊娠中期以降に一旦直立位に近い姿勢にはならず、下肢拳上が不十分なまま起立から直ちに歩行へ移行する妊婦は、転倒の危険性が高いため、大きな下肢挙上や腹部を圧迫せず、かつ一旦安定性を確保した立位姿勢後に歩行を開始する動作指導が必要である。<BR>【まとめ】<BR>妊娠中も妊娠前と同様の日常生活動作は避け難く、理学療法の視点から動作様式について検討し、安全な動作方法を提示する必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528650112
  • NII論文ID
    130005451496
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_256
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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