両上肢挙上肢位が重心動揺におよぼす影響

  • 舟久保 一也
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 磯野 賢
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 宮下 大佑
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 佐藤 聡
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 山田 俊幸
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 山本 咲
    甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科

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【目的】<BR> 日常生活において棚に置いてある物を両手で把持しようとした際、バランスを崩し転倒する高齢者に遭遇する。本研究では、両上肢挙上およびリーチ動作肢位が上肢挙上角度別に重心動揺にどのような影響を及ぼすか検討する。 <BR>【方法】<BR> 対象は、本研究の趣旨を説明し同意が得られた健常成人25名(平均年齢27±5.2歳)とした。測定は、直立立位、両上肢挙上位(以下、リーチなし群)、両上肢挙上位からリーチした肢位(以下、リーチ群)とし、上肢挙上角度は135度、90度、45度の3パターンとした。リーチは上肢長の20%の距離とし、上肢挙上角度やリーチ距離の指標には、あらかじめ固定した台にメジャーを貼り付けた器材を使用した。測定は、重心動揺計(ANIMA社製G-6100)を用い、各肢位とも裸足・閉脚で静止立位を30秒間行った。 データの抽出は、直立立位の総軌跡長(cm)を基に各パターンから除して算出した。リーチなし群とリーチ群の上肢挙上角度による差の比較はt検定を行い、各パターンの比較は、一元配置の分散分析を行い、多重比較検定を用いて検討した。なお、有意水準は5%とした。 <BR>【結果】<BR> 両群共に上肢挙上角度の増加に伴い総軌跡長の割合が増加する傾向を示した。リーチなし群とリーチ群は全ての上肢挙上角度において有意差が認められた(p<0.05)。両群共に135度挙上位に比べ90度と45度挙上位で総軌跡長の割合が有意に減少した(p<0.05)。また、90度と45度挙上位では有意差は認めなかった。 <BR>【考察】<BR> 両群ともに、上肢挙上角度の増加に伴い総軌跡長の割合が増加したのは、重心位置が高くなるためと考える。リーチ動作は、平衡を保つために、足ストラテジーと股ストラテジーが作用することが諸家により報告されている。今回、135度挙上位でのリーチでは、90度と45度挙上位でのリーチに比べて股ストラテジーが作用しにくいため有意差が認められたと推察する。一方、リーチなしでの両上肢挙上は、鈴木らによると上肢挙上角度が78.6度の時点に達するまでは体幹の安定性として、それ以降は体幹の伸展運動としての機能を発揮するとされている。そのため、135度挙上位に比べ90度と45度挙上位では体幹の伸展運動による影響が少ないと推察する。今回、上肢135度挙上動作やリーチ動作は、高度な姿勢制御が必要になることが示唆された。今後、上肢挙上やリーチ動作等、上肢の活動を取り入れた訓練を行い、日常生活における転倒防止につなげていきたい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528704000
  • NII Article ID
    130006950892
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.16.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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