脊柱に変形を有した脊髄損傷症例へのシーティングの一考察
抄録
【はじめに】今回、当センター入所中に左殿部と大腿部に続けて発赤が出現した脊柱に変形を有した脊髄損傷(Th10損傷)症例に対してシーティングを実施し、一考察を得たので報告する。なお、症例には本学会で報告する目的及び内容を説明し、同意を得た。<BR> 【経過と考察】症例は20代女性、右凸の先天性脊柱側弯症に対し中学時代に手術を実施、術後に第10胸髄損傷・完全対麻痺となった。その後在宅生活を経て200×年に当センター入所、車いすは入所4年前に作製したOX社製インテグラルを使用し、座クッションはJ2クッション、背シートはOX社スタンダード背シートと共に側弯の最突部を包み込むウレタンクッションを使用していた。また、入所時の起居動作・ADLは自立していた。入所半年経過後、左大腿外側と左殿部外側に続けて発赤が出現した。原因を1.車いす作製時からの体形変化による両側スカートガード・フレームへの身体接触、2.右凸側弯による体幹右側傾斜および骨盤の左側方傾斜・前方への滑り出しの抑制困難によるものと考えた。左坐骨の接触圧(以下座圧)は200mmHg以上(ForceSensitiveApplications:タカノ社製体圧分布測定器)であった。以上より早期解決のため、2.の背シート・座クッションの検討を行った。まず背シートにJ3ディープバックを用い、体幹の正中保持を可能にするため、症例の脊柱形状に合わせてクッションを入れトータルサポートを実現し、右側にラテラルサポートを設置した。座クッションは、左坐骨へ集中していた座圧を軽減し、骨盤の水平保持を可能にするため左側のジェルを増量した。結果、背については症例の腰痛の訴えが強く座位保持困難となり、背は入所時使用していた背シートとウレタンクッションを使用し、背張りを本人の背の形状に添うように調整した。座クッションは良好な座圧が得られたが症例の違和感が強く、最終的に両側にジェルを増量することで座圧を軽減し本人の違和感のない状態に調整した。調整後、3か月経過した時点で発赤は見られなかった。以上より、本症例は先天性脊柱側弯症の既往があり、中学時代の側弯の術後に脊髄損傷となった為、当センター入所時点では脊柱と骨盤の可動性が乏しかったと考えられた。そのため変形を矯正するシーティングではなく、症例の脊柱形状に沿ったものを選びつつ、動作時の脊柱移動に合わせて接触面が移動する背サポートと座クッションが必要であり、動作を制限しないシーティングが必要であったと考えた。本症例の様に、手術が必要な脊柱変形が車椅子生活以前に生じている場合は、長時間の車椅子座位から生じた脊柱変形に対するシーティングとはアプローチ方法を変えて検討する必要があるという事を学んだ。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 28 (0), 70-70, 2009
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205528740480
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- NII論文ID
- 130006950915
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可