脳卒中片麻痺患者に対する足底振動刺激が機能回復および動作改善に与える影響

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抄録

【目的】<BR>今回,脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)への足底振動刺激による立位バランスや歩行への即時効果について検討する機会を得たので報告する.<BR>【方法】<BR> 対象は2011年10月~2012年2月の期間に当院へ入院された片麻痺患者の内,高次脳機能障害および認知機能低下がなく,自助具の使用有無は問わず歩行レベルが見守り以上の患者6名(平均年齢74.0±6.8歳,男性4名/女性2名,右片麻痺4名/左片麻痺2名,急性期4名/亜急性期1名/維持期1名,下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)IV 1名/V 3名/VI 2名)とした.全ての対象者に対して書面および口頭にて本研究の主旨説明を行い,同意を得た.対象者に背もたれのある椅子に安静座位をとらせて足底振動刺激を15分間加え,その前後で麻痺側足底触覚(以下足底感覚),静的立位における麻痺側荷重率(以下荷重率),10M自然歩行時間(以下10M歩行),Timed Up & Goテスト(以下TUG)を測定した.足底振動刺激はツインバード工業(株)製のフットマッサージャーRM-B705BRを使用,介入前後の各測定結果の比較検討を行った.<BR>【結果】<BR>足底感覚は6名中2名(いずれも急性期)にて軽度改善し,この2名において荷重率増加がみられた.残りの4名においては足底感覚に変化はなく,荷重率は3名に変化なし,1名(急性期)に減少が認められた.10M歩行は足底感覚・荷重率に変化のなかった1名(女性,右片麻痺,急性期,BRS IV)で著明に改善し(介入前27秒81,介入後18秒59),同被験者にてTUGの著明な改善が認められた(介入前26秒31,介入後20秒45).その他5名においては10M歩行・TUGともに著明な変化はみられなかった.<BR>【考察】<BR>片麻痺患者では,異常筋緊張による痙縮や随意性の低下を受け,歩行等の動作レベルが低下していることが多くみられる.先行研究では振動刺激の効果として異常筋緊張の改善が挙げられており,今回歩行・TUGが改善した1例においても,足底感覚や荷重率には変化を及ぼさなかったものの,足底振動刺激により麻痺側下肢の筋緊張が適切な状態に調整され,動作の改善につながったのではないかと考えられる.歩行・TUGが改善した症例はBRS IVと他の被験者より比較的麻痺が残存していたことからもそのことがうかがえる.また,今回機能・動作に変化のみられた被験者は4名とも急性期であり,発症後早期のほうが足底振動刺激による影響を受け易い可能性が示唆された.今後は症例数を増やして麻痺の程度別や病期別に足底振動刺激の効果を検証するとともに,その作用機序や効果の持続時間について明らかにしていきたい.

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  • CRID
    1390001205528753920
  • NII論文ID
    130005451562
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_288
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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