母指MP関節拘縮のリハビリテーションにおける注意点
抄録
【目的】<BR>母指MP関節の可動域は個人差が非常に大きいため、可動域訓練を行う際には健側の可動域が重要な指標となる。そこで健常成人の母指MP関節可動域の左右差がどの程度であるかを明らかにし、母指MP関節拘縮に対する可動域訓練目標値を検討する。<BR>【方法】<BR>本研究の実施にさきだち、病院倫理委員会に本研究の申請を行い、目的と意義について説明し、研究実施の許可を得た。また年齢その他の条件を満たす被験者に対し、事前に本研究の目的と意義を説明し、同意を得た上で関節角度の測定を行った。母指に既往がない健常成人150名(男性75名、女性75名、平均年齢36.1歳)の母指MP 関節、計300関節を対象とした。加齢に伴う変性疾患を除外するために、年齢は20歳以上、50歳未満とした。方法として、母指MP関節の最大自動屈曲角・伸展角をそれぞれゴニオメーターで1°間隔で測定し、最大角度の分布、男女差、左右差の統計学的処理を行った。<BR>【結果】<BR>屈曲角は平均59.5°(16°~90°)、伸展角は平均7.9°(-32°~58°)で、男女間に有意差を認めなかった。屈曲角の左右差は平均4.8°(0°~28°)、伸展角の左右差は平均6.4°(0°~36°)、上側100P%点(スチューデントt分布)はP=0.05で屈曲角10.6°、伸展角14.3度、P=0.01で屈曲角15.1°、伸展角20.4°であった。<BR>【考察】<BR>屈曲角の最大値90°と最小値16°との差は74°、伸展角の最大値58°と最小値-32°との差は90°であり、いずれにおいても個人差が非常に大きかった。一方、左右差は屈曲角で平均4.8°、伸展角で平均6.4°と非常に小さく、健側の可動域が指標として有用であると思われた。また上側100P%点の値から、屈曲角で11°以上、伸展角15°以上健側に比し低下している場合は、可動域制限が十分改善していない可能性が高く、さらに屈曲角16°以上、伸展角21°以上健側に比し低下している場合は、可動域制限が改善されていないことが強く示唆された。<BR>【まとめ】<BR>母指MP関節の可動域は個人差が大きいため、一定の角度を正常値として用いることはできない。唯一指標として用いることが出来るのは健側MP関節の可動域のみである。本研究では健常人における母指MP関節可動域の左右差がどの程度存在するかを調査し、統計学的検討を加えることにより母指MP関節のリハビリテーションにおける関節可動域の目標値を明らかにした。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 31 (0), 75-, 2012
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205528816000
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- NII論文ID
- 130005451600
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可