第5中手骨誘導が前鋸筋活動に及ぼす影響

  • 稲垣 郁哉
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科
  • 小関 博久(MD)
    東都リハビリテーション学院
  • 財前 知典
    日本歯科大学大学院 生命歯学研究科 解剖学第一講座
  • 小関 泰一
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科
  • 松田 俊彦
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科
  • 古橋 さやか
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科
  • 平田 史哉
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科
  • 藤田 仁
    医療法人博聖会 広尾整形外科 リハビリテーション科

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説明

【目的】<BR>前鋸筋は肩甲帯機能に深く関与しており、上肢運動時に肩甲骨を動かす役割だけでなく胸郭への固定作用も担うため、理学療法を展開する上で非常に重要な筋であることは知られている。臨床においては、前鋸筋に対する直接的な収縮運動のみより、手部に誘導を加えることで前鋸筋機能が高まることは多い。特に第5中手骨の背側誘導にて前鋸筋機能が改善することを経験する。そこで今回、手部からの運動連鎖を検証する目的として荷重位での第5中手骨テーピング誘導が前鋸筋活動と手圧分布に及ぼす影響を検討した。<BR>【方法】<BR>対象はヘルシンキ宣言に基づき本研究の主旨を説明し同意を得た健常成人男性12名(平均年齢24.75±4.69歳)とし、課題動作は上肢を荷重位にさせた四つ這い位でのプッシュ動作とした。動作は右上肢のみとした。右手部の位置は、下顎垂直下に位置させ両膝関節との3点支持とした。第5中手骨誘導は入谷式足底板の評価に用いる5列外返し誘導テーピングを参考に、背側の第5中手骨頭と舟状骨間に貼付した。テーピングは長さ8cm、張力200mgに統一し、同一験者が施行した。筋活動は能動電極型筋電図、手圧分布は圧分布計にて測定した。テーピング誘導と誘導無しの動作時に得られた筋電波形を積分処理、手圧分布を数値化し、それぞれ対応のあるt検定を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>テーピング誘導では誘導無しと比較し、前鋸筋活動が有意に増加し(平均値12.9±11.8%、p<0.01)、手圧分布は内側荷重が有意に増加した(平均値5.6±3.3%、p<0.01)。<BR>【考察】<BR>本研究では第5中手骨外返し誘導テーピングにて前鋸筋活動と内側荷重が有意に増加した。これはテーピング誘導により外側縦アーチが挙上し、手圧が中央へ偏移した結果、手部での支持機能が向上したことでプッシュ動作時の前鋸筋活動が増大したものと考えられる。この動きは足部における第5列外返し誘導にて外側から内側への荷重移動を早める連鎖に類似しており、手部も足部同様の運動連鎖機能を有することが予測される。このことは、第5中手骨の誘導が前鋸筋機能に影響を与える可能性を示しており、手部のアライメントを含めた上肢機能評価の重要性を示唆しているものと推察される。<BR>【まとめ】<BR>本研究の結果から荷重位において第5中手骨の位置関係が前鋸筋活動と手圧分布に影響を及ぼすことが示唆された。この動きは上肢でも足部に類似した運動連鎖を生じることが予測され、上肢の運動連鎖を考慮した理学療法の重要性を示していると考える。今後は非荷重位での運動連鎖も比較検討しより臨床に応用できる研究へと展開させたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528817024
  • NII論文ID
    130005451601
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_76
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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