底屈制動・背屈補助機能を有するEasy Strideを使用したことで歩行能力が改善した1症例

DOI

抄録

【はじめに】<BR>タマラック付プラスチック製AFOにて腰痛や胼胝形成などが生じていた脳性まひによる右片麻痺のケースに対して、底屈制動・背屈補助機能を有するプラスチック短下肢装具力源ユニットM5700 Easy Stride(以下Easy Stride)を用いた結果、症状の改善がみられたので報告する。なお、発表に際し本人および保護者には説明の上同意を得ている。<BR>【対象】<BR>男性14歳。Brunnstrom StageはⅤ-Ⅳ-Ⅳ。知的能力はWISCにてIQ60。中学2年生で卓球部に所属。杖なし歩行自立。<BR>【経過】小学3年生頃からプラスチック製AFO(タマラック足継手付)を装着し、中学1年生の夏頃より踵骨の胼胝・水胞形成を繰り返し、中学2年生になり腰痛や右上肢の筋緊張亢進が出現してきた。裸足歩行では装具使用時と比較し、Pre-swing(以下PSw)が観察できたことから足関節底屈をゆるす必要があり、また、Loading Response(以下LR)からMid Stance(以下MS)移行期の推進力低下も認めたため重心の前方移動を補助する必要があった。両機能と活動度を考慮し、Easy Strideを選択した。導入後も調整を行い、完成から1か月後、胼胝・歩行能力ともに改善した。<BR>【検証方法】<BR>歩行の改善を確認するために、変更前後の10m歩行および走行の速度・歩数データの比較に加えビデオ解析にて歩容の比較を行った。(ビデオ解析にはMedia Blendを使用) <BR>【結果】<BR>10m歩行は変更前9.11秒(15歩)から変更後6.75秒(13歩)、10m走行も2.75秒(10歩)から1.99秒(9歩)と改善を示した。歩行解析では左Initial Contact時(以下IC)の体幹前傾角度が23.1°から13.1°へ減少、右MS時の股関節伸展が-3.9°から13.3°と拡大し、また、IC時の肘関節屈曲が45.5°から18.6°と改善が見られた。同時に踵骨の胼胝・腰痛も改善した。<BR>【考察】<BR>変更前の装具では、LR・PSw時の足関節底屈制限により装具内でピストン運動が生じた結果として踵部に胼胝を形成していたものと考えられた。同時にLRからMSに右股関節伸展が出来ずに推進力を生み出すために体幹を前傾させざるを得ず、そのため肩関節屈曲内転筋群の筋緊張も高めていた。加えて、このような体幹や上肢の代償動作により体幹伸展を起し腰痛が発生し、筋緊張を高めていたと考えられる。<BR>今回Easy Strideを加え、底屈に対して弾性バンパによる制動をかけ、ゴムの反発力を用いて前方への重心移動を補助する特性が機能したことで、歩行周期全体で体幹前傾が修正され股関節伸展も出現し、無理のない姿勢・歩容の変化が得られたものと考えられる。今回用いたEasy Strideは本症例のような早い動きにも十分対応が可能であると思われた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528835328
  • NII論文ID
    130005451618
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_45
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ