投球動作における体重移動と体幹傾斜及び軸足の蹴りとの関連性
Description
【目的】<BR> 投球動作には軸足から踏み込み足への十分な推進力を伴った体重移動が重要とされ,その体重移動を妨げる要因の一つとして非投球方向への体幹傾斜が挙げられている.そこで本研究では,非投球方向への体幹傾斜角と,投球方向への軸足の蹴りの力(足関節底屈)に着目し,ボールリリース(以下,BR:Ball Release)時の体重移動との関連性を検討することを目的とした.<BR> 【対象】<BR> 肩・肘痛のない大学野球部員14名(年齢19-24歳,野球歴7-16年,身長169.9±6.9cm,体重63.4±9.3kg,右オーバーハンドスロー)を対象とした.全ての対象者には研究の主旨を説明し同意を得た.<BR> 【方法】<BR> 対象者にワインドアップでの全力投球を行わせ,非投球方向への最大体幹傾斜角,ストライド,体重移動率をデジタルビデオカメラ(Sony製 DCR-TRV900,シャッター速度10000Hz,周波数30Hz)を用いて計測し,軸足の蹴りの力を床反力計(ANIMA社製MA-6250,周波数1000Hz)を用いて計測した.反射マーカーは第1胸椎,第5腰椎,左大転子,左右踵骨の計5箇所に貼付した.基本軸はホームベースに向かう水平方向をX軸,3塁方向をY軸,鉛直方向をZ軸とした.撮影した画像はデジタル画像計測ソフト(micro analyzer)を用いて解析した.<BR> 体幹傾斜角は床面からの垂直線と第1胸椎,第5腰椎を結ぶ直線のなす角とし,体幹回旋による影響を少なくするため上部体幹と写軸が垂直になる位置から撮影した.ストライド及び左大転子の位置はY軸上一塁側の地点から撮影した.ストライドは両踵間の距離を身長で除した値とした.体重移動率は右踵(軸足)とBR時の左大転子(踏み込み足)の距離をストライドで除した値とし,体重移動の指標として用いた.蹴りの力は床反力X成分のpeak値を体重で除した値とした.計測項目の検討にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした.<BR> 【結果及び考察】<BR> 体幹傾斜角と体重移動率には有意な負の相関(r=-0.586)を認め,蹴りの力と体重移動率には有意な正の相関(r=0.559)を認めた.体幹傾斜角と蹴りの力,体幹傾斜角及び蹴りの力とストライドには有意な相関を認めなかった.<BR> 以上の結果より,投球方向への体重移動には非投球方向への体幹傾斜と軸足の蹴りの力が関係しており,特に体幹傾斜角の大きい選手は体重移動が小さくなる傾向にあった.体重移動が不十分となると運動連鎖の破綻を招き,肩や肘関節への負担が増大しやすいと言われており,今後,体重移動と投球障害との関係を検討していく必要がある.
Journal
-
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
-
関東甲信越ブロック理学療法士学会 28 (0), 95-95, 2009
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- Tweet
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205528839168
-
- NII Article ID
- 130006950959
-
- ISSN
- 2187123X
- 09169946
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed