膝関節角度の違いで腓腹筋とヒラメ筋の筋緊張は鑑別可能か

  • 竹内 伸行
    本庄総合病院リハビリテーション科 群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻
  • 桑原 岳哉
    本庄総合病院リハビリテーション科
  • 臼田 滋
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻

Description

【目的】主たる足関節底屈筋(Ankle Planterflexor;AP)の腓腹筋とヒラメ筋の筋緊張は一般に膝関節角度を変えて測定されるが,両者を統計学的に比較した報告は見当たらない。本研究の目的は,膝関節角度の違いで腓腹筋とヒラメ筋の筋緊張を鑑別できるかを,統計学および解剖学的視点より検討し明らかにすることである。<BR>【方法】対象は同意を得た脳血管障害片麻痺患者74名であった。APの筋緊張を膝伸展位と膝90°屈曲位でModifed Tardieu Scale(MTS)のR1とR2,Hand-held Dynamometerを用いて測定した他動的足関節背屈抵抗トルク(抵抗トルク),Ankle Planterflexor Tone Scale(APTS)で評価した。全て1名の理学療法士が測定し,測定順はランダム化した。R1,R2,抵抗トルクは対応のあるt検定,APTSはWilcoxonの符号付順位検定を用いて両肢位の値を比較した(有意水準は5%未満)。本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。<BR> MTSのR1はできるだけ速く筋を伸張(足関節を背屈)してひっかかり(反射性収縮)が生じる背屈角度であり,R2はできるだけゆっくり筋を伸張(足関節を背屈)して得られる最大背屈角度である。APTSは我々が開発した指標で,測定項目は“反射性要素(neural components;NC)”,“中間域の抵抗(middle range resistance;MR)”,“最終域の抵抗(final range resistance;FR)”で構成される。膝伸展位と膝90°屈曲位で測定し,NCはできるだけ速く,MRとFRはできるだけゆっくり筋を伸張する。筋最大短縮位(足関節最大底屈位)を開始肢位とし,各3回測定し最大の値を採用する。段階付けは,NCは0:伸張反射による収縮を認めない,1:伸張反射による単収縮を認める,2:3秒に満たない足クローヌスを認める,3:3秒以上10秒未満の足クローヌスを認める,4:10秒以上の足クローヌスを認める。MRは0:抵抗を認めない,1:軽度の抵抗を認める,2:中等度の抵抗を認める,3:強い抵抗を認めるが他動運動は可能,4:他動運動は困難。FRは0:抵抗を認めない,1:軽度の抵抗を認める,2:中等度の抵抗を認める,3:強い抵抗を認めるが最終域の保持は可能,4:最終域の保持あるいは他動運動が困難,である。<BR>【結果】測定結果を示した(膝伸展位/膝90°屈曲位,平均値±標準偏差)。R1は-13.7±10.0/-3.3±11.8[°],R2は-4.1±10.1/7.8±13.6[°],抵抗トルクは6.4±1.8/5.9±1.6[Nm],APTSのNCは1.1±1.4/1.4±1.4,MRは1.4±1.0/0.8±0.8,FRは2.0±0.9/1.4±1.0であった。膝90°屈曲位に比してR1,R2,NCは膝伸展位が有意に小さく,抵抗トルク,MR,FRは膝伸展位が有意に大きかった(全てp<0.01)<BR>【考察】腓腹筋は膝,足関節に作用する2関節筋でありヒラメ筋は足関節に作用する単関節筋である。この解剖学的特徴と本研究結果を考慮すると,膝関節角度の違いにより(膝伸展位と膝90°屈曲位で),主たる足関節底屈筋である両筋の筋緊張を鑑別できると示唆された。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528841856
  • NII Article ID
    130006950961
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.93.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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