大腿骨近位部骨折術後患者に対する骨盤前傾エクササイズによる股関節屈曲可動域改善の有効性

DOI
  • 荒川 洋平
    牛久愛和総合病院 リハビリテーションセンター

抄録

【目的】<BR>大腿骨近位部骨折術後の股関節屈曲可動域拡大は基本動作や日常生活動作獲得の過程で重要な要素の一つである。臨床上、関節可動域訓練は背臥位や端座位で大腿骨の動きを操作することが多い。しかし、痛みを誘発しやすく過剰な筋収縮や心理的なストレスなど二次的障害につながる場合もあり術後早期から積極的に介入することは難しい。本研究では、大腿骨近位部骨折術後患者に端座位姿勢で骨盤前傾エクササイズを行うことで股関節屈曲可動域の改善に有効であるかどうかを検証することを目的とした。<BR>【方法】<BR>対象は大腿骨近位部骨折受傷後当院で手術を行った11例(男2名、女9名、平均76.2歳)とした。対象者はランダムに骨盤前傾エクササイズ介入群(以下介入群)5名、骨盤前傾エクササイズ非介入群(以下非介入群)6名に振り分けた。股関節屈曲角度は日本リハビリテーション医学会の方法に準拠し、手術後3日後、7日後、14日後に測定した。骨盤前傾エクササイズは端座位で股関節内外旋・内外転中間位として自動介助運動で骨盤帯の動きを誘導した。頻度は1日10回2セット。代償運動に注意し疼痛のない範囲で行った。それぞれの時期における両群間の比較はマンホイットニーのU検定(片側検定)を用い有意水準5%にて行った。対象者には本研究の主旨を説明し同意を得た。また、当院倫理委員会で研究内容の承認を得た上で開始した。<BR>【結果】<BR>術後3日目介入群の股関節屈曲角度は84.0 ±9.6 °、非介入群は72.5 ±12.1 °であり介入群で股関節屈曲角度が有意に高値を示した(P <0.05)。術後7日目の介入群が103.0 ±2.7 °、非介入群が92.5 ±11.3 °、また術後14日目では介入群が112 ±5.7 °、非介入群が102.5 ±12.5 °であったが有意差は認めなかった。<BR>【考察】<BR>術後3日目介入群で股関節屈曲可動域が有意に大きくなった。端座位で骨盤前傾を行う介入群では大腿骨が座面に固定された姿勢であり、寛骨臼蓋に対して大腿骨頭を安定させるための過剰な収縮が起きにくい。しかし、背臥位で股関節屈曲可動域訓練を行う非介入群では、股関節を支点に大腿骨が長いモーメントアームとなるため大腿骨頭を安定させるために疼痛が出現しやすく、疼痛や恐怖感による防御性の収縮が生じやすくなる。よって術後早期で両群間の股関節屈曲可動域に変化を認めたのではないかと考える。<BR>【まとめ】<BR>今回の結果から骨盤前傾エクササイズを行うことで大腿骨近位部骨折術後早期において股関節屈曲可動域の改善に有効性があることが示唆された。今後さらに症例数を増やし、疼痛やADL自立度との関連性も含め検討していく必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205528848896
  • NII論文ID
    130005451622
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_58
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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