特別工業地区制度の実態と評価に関する調査研究 : 住工混合地域の研究 (その 2)

書誌事項

タイトル別名
  • RESEARCH FOR THE LOCAL LAW OF THE SPECIAL INDUSTRIAL ZONE : Study on Housing and Industrial Mixed Land use Areas (No.2)
  • 住工混合地域の研究-2-特別工業地区制度の実態と評価に関する調査研究
  • ジュウコウ コンゴウ チイキ ノ ケンキュウ 2 トクベツ コウギョウ チク

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抄録

条例の内容については, 各自治体で多様なものとしてつくられている。それらの典型例をあげると, 「緩和型」では, 京都市(西陣)における厳しい構造制限条項の付加, 三条市, 燕市における金属・機械関連業種に特有な多様な作業内容や業種に対応した緩和条項の設定, 「強化型」では, 東京都, 名古屋市などにみられる不特定(複数地区)の準工業地域に対する商業地域なみの作業場床面積制限, 静岡市の準工業地域における立地そのものを禁止する業種と, 立地は許容するが構造制限を付加する業種の二段階からなる規制などである。こうした条例の内容から, 大都市の既合地域に対して適用が考えられるタイプとしては, 次のような点が指摘できよう。(1)全域的に適用できるものとしては, 作業場床面積の制限, 原動機出力の制限, 特定業種の規制, 構造制限の付加など, (2)業種別, 業態別に規制を考えていくものとしては, 様々な業種と結びついて分散型の立地を主とするものであり, メッキ, 金型, 塗装, プラスチック成型加工など, (3)特化集積をする地域集団として考えていくべきものとしては, 特定業種に対する制限の緩和とそれに伴なう構造制限の付加などである。条例の効果については, 「効果あり」としているものが多いが, その内容については, 経営者の操業のしやすさ, 生活環境改善意識の高まりや新規立地の規制などにとどまっており, 既存建築物の構造改善といった効果には仲々つながっていない。これは, (1)零細層が多いうえに長期的な不況であること(経営者の資力), (2)条例制定後日が浅いこと, (3)行政水準(各企業の成長・発展まで含めた現状把握や指導を行なえていない, 公害や商工行政との協力関係が弱い)などに起因しているが, この条例を真に実効あるものにしていくためには, 現状では大きい限界をもっている。それは, 建築基準法自体のもつ規制条件だけで資金助成条件がないということである。こうした限界の中で, 本制度をより効果あるものとしていくためには商工行政との結合が不可欠であろう。その理由は, 第1に, 工場の増改築, たてかえに伴う構造改善等への資金助成や低利融資条件の創設, 拡大の必要性からであり, 第2には, はじめにも述べたように, 工場空間の改善による生活環境の改善は, 経営の安定・向上と結合することが求められ, そのためには企業の成長, 発展といった経営状態を含めた現状把握が必要となるからである。最後に今後の検討課題にも渡るが, 現在地における自力改善も含めた増改築, たてかえ等によるきめ細かい構造制限, 公害防止施策といった対策は, スクラップアンドビルドによる工場アパートや工場団地対策と比べて, 個別工場の負担条件といった点でも, また, 後者の施策が一部の地区や一部の階層にしか適用の現実的可能性のないことを考えると, 地域全体の環境水準の向上や全体としての投資効果といった点でもより有効な対策であると思われる。

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