DNAメチル化阻害剤ゼブラリンによるヒト肝細胞癌に対する細胞毒性

  • 中村 和昭
    国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部
  • 中林 一彦
    国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部
  • 秦 健一郎
    国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部
  • 田上 昭人
    国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部

書誌事項

タイトル別名
  • DNA methyltransferase inhibitor zebularine inhibits human hepatic carcinoma cells proliferation and induces apoptosis

説明

ゼブラリンは,ゲノムDNAの脱メチル化を引き起こすシチジン類縁体のDNAメチル化阻害剤である。今回我々は,ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を用いて,ゼブラリンのヒト肝細胞癌に対する細胞毒性とその作用機序を検討した。ゼブラリンはHepG2細胞に対して,細胞増殖の抑制と細胞死の誘導による抗腫瘍活性を示した。ゼブラリンのHepG2細胞に対する抗腫瘍活性機構を明らかにするため,ゼブラリン処理によるDNAメチル化動態を検討した結果,HepG2細胞のDNAメチル化に対するゼブラリンの作用はほとんど認められなかった。一方,ゼブラリンはcyclin-dependent kinase 2 (CDK2)発現およびretinoblastoma protein (Rb)発現を低下させ,p21WAF1/CIP1 およびp53発現を亢進させた。さらにゼブラリンはp44/42 MAPKリン酸化を亢進した。これらの結果から,ゼブラリンはp44/42 MAPKリン酸化を亢進させ,p21WAF1/CIP1の発現亢進,CDK2およびRbの発現低下を介して,細胞周期停止を引き起こしていると考えられた。加えて,ゼブラリン処理によりアポトーシス抑制因子であるBcl-2の発現低下が認められ,さらにHepG2細胞においてBcl-2発現を誘導することが知られているdouble-stranded RNA-dependent protein kinase (PKR)発現が低下した。これらの結果からゼブラリンによるPKR発現の抑制がBcl-2発現低下を介してHepG2細胞の細胞死を誘導していると考えられた。以上の結果は,ヒト肝細胞癌に対するゼブラリンのDNAメチル化非依存的な新規機序による細胞周期停止および細胞死誘導機構を示唆する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205545775232
  • NII論文ID
    130004676642
  • DOI
    10.14869/toxpt.40.1.0.150522.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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