勃起障害の新しい治療
-
- 石井 延久
- 東邦大学泌尿器科学講座
説明
古い時代より糖尿病に勃起障害(erectile dysfunction : ED)が合併することはよく知られている。そのため、健康診断や診療時に尿糖を指摘されただけで、男性としての自信を喪失する症例もある。一方、糖尿病は放置すると動脈硬化が進行し、血管障害や神経障害などの重篤な合併症に陥るリスクは高い。このように糖尿病性EDは疾患そのものが心因となる機能性EDと血管や神経の器質性障害によるEDが混在する混合性EDに分類される。EDの診断は国際勃起スコアー5(IIEF-5)を使用されるが、これは国際間のデータ比較にも便利である。一方、機能性EDは突然発症し、器質性EDは大部分が徐々に起こることから問診により両者の鑑別は容易である。また、早朝勃起やマスターベーションによる勃起が確認できれば機能性EDと診断して差し支えない。最近になり、5-phosphodiesterase(5-PDE)阻害薬(バイアグラTM、レビトラTM)が発売され、EDの治療は飛躍的に進歩している。5-PDE阻害薬は一酸化窒素(NO)により平滑筋細胞内cyclic GMP(c GMP)の代謝を阻害して、陰茎海綿体の小動脈(螺旋動脈)や海綿体平滑筋の弛緩を起こしやすくする。そのため、5-PDE阻害薬は非アドレナリン非コリン作動神経末端や陰茎海綿体内皮からNOが産生あるいは放出されないと効果はない。すなわち、5-PDE阻害薬無効例はNOの産生、放出障害を疑わせる。われわれは5-PDE阻害薬を試験的に投与して、効果があればそのまま処方を継続している。一方、5-PDE阻害薬無効症例はNO産生、放出障害の原因を検査するが、欧米では検査を省略して心療内科や精神科に紹介するか、プロスタグランジンE1の陰茎海綿体自己注射や陰圧式勃起補助具による治療を患者やパートナーの希望に沿って選択させることが多い。いずれにしても保存治療が不可能であれば最終的には陰茎プロステーシスの陰茎移植手術が患者に勧められる。 最近になりEDは泌尿器科領域の特殊な疾患からごくありふれた疾患として社会的に認知されつつある。今後、糖尿病専門医の先生方にEDを相談される機会は増加すると予想される。内科領域の先生方にED診療を少しでも興味を持って頂ければ望外の幸せである。
収録刊行物
-
- 糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
-
糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨 39 (0), 26-26, 2005
一般社団法人 日本糖尿病学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205546168448
-
- NII論文ID
- 130006952876
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可