インスリン抵抗性の発症機構

説明

2型糖尿病をはじめとする糖代謝異常を考える上で、膵ラ氏島beta細胞のインスリン分泌不全とともに肝臓および末梢組織、特に骨格筋組織におけるインスリン作用低下が重要である。インスリン作用低下の病態はインスリンによる肝臓での糖放出抑制の障害と骨格筋および脂肪組織におけるブドウ糖取り込み促進作用の低下であり、これをインスリン感受性低下、あるいはインスリン抵抗性状態と呼ぶ。ピマインディアンにおいて行われた長期経過観察研究における耐糖能正常から耐糖能異常、さらには糖尿病へ悪化した症例での検討により、糖尿病への最終的な進展はインスリン分泌の低下が規定するが、糖尿病発症を阻止するためには初期の骨格筋組織におけるインスリン感受性低下、すなわちブドウ糖取り込みの障害の是正が重要であるとされている。また、最近、インスリン抵抗性は、肥満、耐糖能障害(糖尿病)、高血圧、高脂血症が同一個人に集積し、冠動脈疾患などの動脈硬化症をきたすメタボリックシンドロームと呼ばれる疾病の根幹をなす病態と考えられて、インスリン感受性改善の試みは、糖尿病発症予防は言うに及ばず、動脈硬化性疾患の発症予防・進展阻止の面からも極めて重要であると考えられる。しかしながら、インスリン抵抗性発症の分子機構については未だ不明な点も多く残されており、インスリンシグナル伝達機構の解明とともに重要な研究課題である。最近の研究の進歩により、インスリン抵抗性がインスリン情報伝達の各ステップにおいて生じること、その発症機構として、遺伝的背景に直接起因するものやライフスタイルの変化に伴って誘導される種々のインスリン抵抗性惹起因子が関与するものが存在することが明らかになってきた。本シンポジウムでは、当教室の成績に加えて、これら最近の知見を紹介し、インスリン抵抗性の発症機構につき概説したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205546185472
  • NII論文ID
    130006952892
  • DOI
    10.11213/aexz.39.0.18.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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