リボソーム生合成に関わるFap7の高発現による亜ヒ酸耐性
書誌事項
- タイトル別名
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- Involvement of Fap7 in protection against toxicity of arsenite in yeast cells
抄録
【目的】ヒ素は環境中に広く存在する有害物質であり、その過剰摂取が様々な健康障害を引き起こすことが知られている。しかし、ヒ素の毒性発現に関わる分子メカニズムはあまり明らかにされていない。本研究では、ヒ素が細胞の生存に必須な機能を阻害することによって細胞に障害を与える可能性を考え、出芽酵母の生存に必須な遺伝子(エッセンシャル遺伝子)の中から亜ヒ酸感受性決定に関わる遺伝子をスクリーニングした。<br>【方法】亜ヒ酸耐性遺伝子のスクリーニング:酵母のエッセンシャル遺伝子(約1,000種)の発現プラスミドをそれぞれ導入した酵母を一株ずつ野生型酵母が成育出来ない濃度の亜ヒ酸存在下で培養し、増殖が認められた酵母を亜ヒ酸耐性酵母とした。<br>【結果および考察】スクリーニングの結果、高発現により酵母に亜ヒ酸耐性を与える遺伝子として数種類(<i>FAP7</i>、<i>ERB1</i>、<i>SPT16</i>など)が同定された。本研究では高発現によって酵母に特に強い亜ヒ酸耐性を与えたFap7についてさらに検討を行った。Fap7はそのアミノ酸配列上の特徴からP-loop型NTPaseであると推測されている。しかし、他のP-loop型NTPase(Ura6、Adk1)の高発現は酵母に亜ヒ酸耐性を与えなかったこのことから、亜ヒ酸毒性軽減作用はすべてのP-loop型NTPaseに共通した機能ではなく、Fap7に特有のものであると考えられる。近年、Fap7がリボソーム40Sサブユニットを構成する18S rRNAの前駆体のプロセシングに関わることが報告された。そこで、rRNAの前駆体のプロセシングに重要なFap7のNTPaseドメイン中に点変異を導入した変異Fap7を発見させたところ、正常のFap7高発現時に比べて亜ヒ酸耐性の著しい低下が認められた。したがって、リボソーム合成経路におけるFap7のrRNA前駆体のプロセシング制御が亜ヒ酸毒性軽減機構において重要な役割を果たしていると考えられる。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 39.1 (0), P-102-, 2012
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205546618496
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- NII論文ID
- 130005008697
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可