ヒト単球系THP-1細胞におけるペントースリン酸経路と亜ヒ酸毒性との関わり

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タイトル別名
  • Relationship between pentose phosphate pathway and arsenite toxicity in human acute monocytic leukemia THP-1 cells

抄録

【目的】我々はヒ素の毒性における分子メカニズムを明らかにするため、真核生物モデルとして有用な出芽酵母を用いて、ヒ素化合物の一種である亜ヒ酸に対する感受性決定に関わる細胞内因子の検索を行い、欠損によって亜ヒ酸毒性を増強させる因子としてペントースリン酸経路(PPP)関連因子を複数同定している。ペントースリン酸経路はNADPHの産生や核酸合成に必要な糖の相互変換において重要な役割を果たすことが知られている。これまでの酵母を用いた検討により、亜ヒ酸がPPP関連因子の発現を抑制し、細胞毒性を示す可能性が示唆されている。本研究では、ヒト単球系THP-1細胞を用いて、亜ヒ酸毒性とペントースリン酸経路との関係について検討した。<br>【方法】THP-1細胞を亜ヒ酸存在下で培養後、Cell counting kit-8を用いて細胞生存率を測定した。RPIA(ribose 5-phosphate isomerase A)のタンパク質は抗RPIA抗体を用いたWestern blottingによって検出した。<br>【結果および考察】亜ヒ酸がPPP関連因子であるRPIAのタンパク質レベルを減少させることが明らかとなった。PPP関連因子の発現低下によって細胞内リボース-5-リン酸が減少することが知られていることから、培地中にリボース-5-リン酸の前駆物質であるD-リボースを添加したところ亜ヒ酸毒性が軽減されることが判明した。したがって、ヒト細胞においても亜ヒ酸はPPP関連因子の発現を抑制することで細胞内リボース-5-リン酸レベルを低下させ、細胞毒性を発現させる可能性が考えられる。酵母を用いた検討により、PPPの抑制が、亜ヒ酸と同様に酸化ストレスを誘発する過酸化水素に対する感受性を亢進することも判明している。しかしながら、過酸化水素処理によってもTHP-1のRPIAのタンパク質レベルの低下は見られず、また、D-リボースの添加によってもTHP-1の過酸化水素感受性はほとんど影響を受けなかった。したがって、PPPの抑制による亜ヒ酸および過酸化水素の毒性増強作用は、それぞれ異なる機構が関与している可能性が考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205546848640
  • NII論文ID
    130005260673
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_p-197
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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