ヒトiPS細胞のミトコンドリア機能による医薬品の毒性評価

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タイトル別名
  • Drug assessment using mitochondrial function in iPS cells

抄録

医薬品や化学物質の中には、ヒト発達期の曝露により神経毒性の誘発が懸念されるものがある。現在行われている動物を用いた発達神経毒性試験はコストや種差などの問題もあり、新たなin vitro評価系が期待されている。<br>そこで我々は、発達期のモデルとしてヒトiPS細胞を用い、in vitro発達神経毒性評価を検討した。有機スズ化合物の一種であるトリブチルスズ(TBT)は動物実験による発達神経毒性が報告されていることから陽性対象物質として用いた。まずiPS細胞に50nM TBTを曝露した結果、細胞内ATP量の減少に伴い、増殖抑制効果が認められた。またTBT曝露によるミトコンドリア形態への影響を調べた結果、Mfn1タンパク質発現の減少に伴い、分裂形態のミトコンドリアを持つ細胞の増加が認められた。さらにE3ユビキチンリガーゼであるMARCH5のノックダウンを行った結果、TBTによるMfn1タンパク質の減少効果が消失した。従って、iPS細胞におけるnMレベルのTBT曝露による毒性作用は、MARCH5を介したMfn1の減少を伴うミトコンドリア機能障害による可能性が示唆された。<br>次に、ヒトiPS細胞におけるミトコンドリア機能が医薬品による毒性評価にも有用であるかどうか検証するために、発達神経毒性が懸念されている抗癌剤5-フルオロウラシルや抗不安薬ジアゼパムを用いてヒトiPS細胞の増殖とATP産生に対する影響を調べた。その結果、5-フルオロウラシルおよびジアゼパムの曝露により細胞内ATP量の減少および増殖抑制が認められた。<br> 以上より、ヒトiPS細胞におけるミトコンドリア機能は、医薬品や化学物質の毒性評価に有用である可能性が示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205547162624
  • NII論文ID
    130005260678
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_p-144
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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