法医学実務と一酸化炭素中毒: 一酸化炭素は敵か?味方か?

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タイトル別名
  • Carbon monoxide toxicity in forensic practices: Friend? or foe ?

説明

法医学実務上、CO中毒は、火災、ガス器具、下水道工事等の事故、車内練炭燃焼による自殺等に多い。その毒性は、酸素O2を凌駕するHemoglobin親和性と組織O2解離抑制による組織低酸素、mitochondria呼吸鎖酵素阻害によるATP産生抑制、中枢活性酸素増生等によると考えられている。火災被害者の血中CO濃度が低い場合、CO中毒、高齢・心疾患の寄与度が火元の責任、保険の支払等に影響を与える。また、既往症のある人が死亡した時、CO発生状況や偽装に気づかないと、事故や殺人を見逃す。<br>COは、大気汚染や喫煙が、心血管系リスクを増す要因の一つと考えられている。また、COは、ヘム蛋白をHemeoxygenase (HO)が代謝する過程で産生され、抗酸化作用、抗炎症作用、細胞死抑制作用を発揮する。恒常発現型のHO-2由来のCOが血管を拡張させるのに対して、誘導型HO-1由来のCOは、脳神経・心筋細胞等が、虚血、酸化ストレス等によって細胞死や機能低下に陥るのを抑える。<br>私は、CO中毒による脳基底核病変が活性酸素増生による細胞死(apoptosis, necrosisの混合)であることを見出した。また、虚血が心筋細胞のCa2+取込み増加よりnecrosisを促すが、これをCO曝露が抑制することを見出した。いっぽう、CO曝露によるAkt活性化が、心筋細胞apoptosisを抑制することを見出した。さらに、冠動脈結紮による虚血再灌流ラットの心筋梗塞は、CO吸入によるAkt. p38MAP kinase活性化により抑制された。ところが、高脂血症ラットを、睡眠時無呼吸発作を再現する間歇低酸素に暴露した時、肝臓Kuppfer細胞に増えるHO-1由来の遊離鉄は、Fenton反応により脂質過酸化を促し、肝障害に寄与することを見出した。<br>このように、COは、細胞、刺激、濃度、時間等、多様な要因において、善悪両方の作用に寄与する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205547601664
  • NII論文ID
    130005260874
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_s18-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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