農薬の毒性評価におけるイヌ長期(1年)試験の必要性について

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タイトル別名
  • The necessity of 1-year dog study for toxicological evaluation of pesticides

抄録

日本における農薬の毒性評価は、農薬テストガイドラインに従って行われた試験成績を用いて行われており、リスク管理上重要な一日許容摂取量(ADI)や急性参照用量(ARfD)が設定されている。特にADI設定では長期毒性試験の無毒性量(NOAEL)が根拠となる場合が多い。この長期試験にはガイドラインにより、イヌ(非げっ歯類)とラット(げっ歯類)が主に用いられている。一方、最近欧米ではイヌ長期試験は必ずしも要求されていない状況にある。今回、演者らは農薬の毒性評価においてイヌを用いる試験が果たす役割、特にイヌ長期試験の必要性を明らかにする目的で、食品安全委員会が公表している農薬評価書を詳細に調査検討したので、その結果について報告する。なお、本報で調査対象にしたのは286剤の農薬(平成27年現在)である。<br>イヌ試験がADIの設定根拠となった農薬は93剤あり、全体のほぼ1/3を占めていた。これらの農薬について、イヌの長期および亜急性(90日)試験における各NOAELとLOAELの値を調べたところ、1)イヌ以外の動物種でも同じNOAELが得られている、2)イヌ長期と亜急性のNOAELが同程度、3)イヌ長期と亜急性のLOAELが同程度と判断される農薬が合計35剤あった。更に、イヌ試験のNOAEL又はLOAELの比が2倍以内で、その差が小さいと判断される農薬が認められた。また、ラットの慢性試験についても同様にNOAELとLOAELを調べてイヌと比較したところ、イヌとラットのNOAEL又はLOAELの比がそれぞれ2倍以内のものが散見され、これらの合計は29剤であった。現在、イヌ試験におけるNOAEL等がラットの1/2未満であった残る29剤の農薬について、毒性所見などを検討中である。イヌ試験における用量設定、匹数などの試験系およびイヌの生物学的特徴等を考慮しながら、農薬の安全性評価におけるイヌ長期毒性試験の必要性について総合的に考えてみたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205547710208
  • NII論文ID
    130005261029
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_s7-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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