重金属環境汚染物質の食品健康影響の評価の経験から

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タイトル別名
  • From the experience with risk assessment of heavy metal contaminants

抄録

リスク評価に用いられるデータセットは様々で、一定のフォーマットのデータセットが諮問に添えられることもある。環境汚染物質では疫学調査の論文があることが多く、食品安全委員会でこれまで行ったメチル水銀・カドミウム・鉛等の重金属環境汚染物質の食品健康影響評価等では、ヒトのデータが用いられた。動物実験からの外挿の必要性がない点ではメリットがあるが、もう一方ではヒトのデータであるが故に、各種の交絡因子が存在したり、一般化にあたって限界がある場合もある。メチル水銀のリスク評価においては、出生コホート研究の結果から胎児をハイリスクグループとして妊婦において1週間当たり2.0μg/kg体重(Hgとして)を耐容摂取量とした。充分に考慮されなかったこととして、1) 栄養素も含めた食品中の他の成分との交絡作用、2) ばく露指標とした毛髪水銀濃度のパーマネント施術による低下、3) 成人におけるメチル水銀ばく露が冠動脈疾患等のリスクファクターであるとの研究結果等がある。その後研究が行われているが、評価を覆すような結果は得られていない。鉛の一次報告(2013年3月)では、小児の血中鉛濃度と知能指数(IQ)等への影響との関連を調べた最近の研究に基づき、血中鉛濃度が4μg/dL以下であれば、有害影響は認められないと結論づけられた。一般成人については、職域での疫学研究のデータを基に、ベンチマークドース(BMD)法を用いて、神経系への影響のBMDLを算出し、血中鉛濃度10μg/dL以下であれば有害影響は認められないと結論づけられた。しかしながら、多くのモデルが提唱されているものの、それらを適用して血中鉛濃度から耐容摂取量を設定することが困難で、血中鉛濃度から摂取量に変換に関してあらたな知見が蓄積された場合に耐容摂取量を検討することにされた。本講演ではこれらの経験やそこから得られる考察を述べたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205548514688
  • NII論文ID
    130005468952
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_w5-1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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