ヒト胎児性癌細胞の細胞周期に対するトリブチルスズの影響

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タイトル別名
  • Effect of tributyltin on cell cycle in embryonic carcinoma cells

抄録

有機スズ化合物はもともと漁業用防汚剤として使用されていたが、現在では内分泌攪乱物質として有害性が指摘され特定化学物質に指定されている。有機スズ化合物はnMオーダーの低濃度で中枢神経毒性を引き起こすことが報告されているが、ヒト発達期における毒性メカニズムは不明な点が多い。我々は、これまでにヒト胎児性癌細胞株NT2/D1を用いたメタボローム解析により、TBTの新規標的分子としてイソクエン酸脱水素酵素 IDH3を明らかにしてきた。<br> 本研究では、低濃度TBTがNT2/D1細胞の増殖に与える影響について詳細に解析を行った。まず、生細胞数に対するTBTの影響を調べた結果、TBT曝露(100nM、48時間)によって細胞数はほとんど変化しなかった。次に、ヨウ化プロピジウム染色による細胞周期の測定を行ったところ、TBT曝露によりG1期の割合の減少及びG2/M期の割合の増加が認められた。従って、低濃度TBTの曝露によりgrowth arrestが起きていることが示唆された。さらにTBT曝露によるgrowth arrestがIDH3を介しているかどうかを明らかにするために、IDH3活性阻害作用を有するApigeninの作用を調べた。10µM Apigenin処理によりTBTと同様にIDH3活性が阻害され、細胞周期におけるG1期の割合の減少及びG2/M期の割合の増加が認められた。<br> 以上の結果から、ヒト胎児性癌細胞における低濃度TBTの毒性メカニズムはIDH3活性の阻害によるG2/M期の細胞周期停止であることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205548649216
  • NII論文ID
    130005468636
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_p-180
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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