食道由来不死化Het1A細胞のHB-EGF依存性細胞遊走能に対する亜ヒ酸の影響

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  • Effects of arenite on the HB-EGF-dependent migration in esophageal immortalized Het1A cells

抄録

【目的】慢性的なヒ素曝露による多臓器における発癌の原因として, 各臓器へのヒ素の蓄積が関係することが知られている. 一方, 当研究室ではマウスを亜ヒ酸に曝露(腹腔内, 飲水経路)すると食道にヒ素が蓄積することを明らかにしている. そこで本研究では, 食道由来不死化細胞を用いて, 癌の進展に関与する細胞遊走能に対する亜ヒ酸の影響について検討を行った. <br>【方法】細胞:ヒト食道由来不死化Het1A細胞を用いた. 細胞遊走能: プラスチックチップを用いたスクラッチアッセイを行い, 定量はImageJ softwareで行った. タンパク質発現:ウエスタンブロット法で検討した. mRNA発現: TaKaRa社のPrimer Arrayを用い, Real-time PCR法で検討した.<br>【結果】Het1A細胞を3ヶ月間0.5, 1および2 µMの亜ヒ酸に曝露した後, 無刺激でスクラッチアッセイを行った際には, 亜ヒ酸に曝露された細胞群とコントロール細胞との間で遊走能に差はなかった. しかし, HB-EGF(50 ng/mL)刺激により活性化される遊走能については, 0.5 µMの亜ヒ酸に曝露された細胞において顕著に遊走能が亢進していた. HB-EGF添加後のERK, p38MAPKのリン酸化について検討したところ, コントロール細胞に比べて0.5 µMの亜ヒ酸に曝露された細胞ではリン酸化が亢進していた. さらに, 細胞周期に関わる88種類の遺伝子のmRNAレベルを検討した結果, 0.5 µMの亜ヒ酸に曝露した細胞にHB-EGFを添加して6, 12時間添加後にcyclinD1などの発現が変動していた. 一方で, HB-EGFと同時に亜ヒ酸(0.5, 1および2 µM)を24時間添加し細胞遊走能を検討したところ, 3ヶ月曝露で有意な亢進が認められた0.5 µMの亜ヒ酸曝露細胞では変化が見られず, 2 µMの亜ヒ酸に曝露したHet1A細胞においてのみHB-EGF添加群と比較して有意な亢進が検出された. <br>【考察】以上の結果から, 短期的および長期的に亜ヒ酸に曝露された食道由来不死化細胞では, EGFR刺激時のシグナル伝達経路が強く活性化され, 細胞の遊走能が亢進することが明らかとなった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205548684544
  • NII論文ID
    130005468664
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_p-186
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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