FGF23を介した腎臓―骨のリン恒常性維持機構に対するカドミウムの攪乱作用
書誌事項
- タイトル別名
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- Molecular mechanisms of cadmium-induced FGF23 upregulation in osteoblast-like cells
抄録
カドミウム(Cd)及びその化合物は強毒性を有し生態系で生物濃縮を引き起こす環境汚染物質でありイタイイタイ病の原因物質である。本症は近位尿細管障害と骨粗鬆症を伴う骨軟化症を特徴とするが、その進行は緩慢で進行度を判定する基準も乏しく、その明確な診断は困難であった。そこで我々はリン利尿因子であるFGF23に着目し、本症の発症にFGF23が関与するか、またCd障害のバイオマーカーとしての可能性について検討した。C57BL/6J系統の野生型雌性マウスにCdCl2溶液を2週間、連日投与したところ、投与14日後に腎臓及び肝臓へのCdの蓄積、高カルシウム血症、リン利尿亢進、及び腎障害が観察された。一方、血中FGF23濃度は投与3日後より増加し、これに伴う血中リン濃度の低下を認めたが、腎機能は正常であった。そこで培養骨芽細胞を用いたin vitroの系で、CdがFGF23の産生・分泌に及ぼす影響の有無について検討を加えた。FGF23の産生は転写誘導に加えて分子内切断による不活化、並びに切断部位付近への糖鎖修飾を介した翻訳後修飾の存在が知られている。検証の結果、CdはFGF23の糖鎖付加を触媒する酵素GalNAc-T3の発現を誘導することを新たに見出した。またその誘導機序として、CdはGalNAc-T3遺伝子の転写をAhR依存的に促進することを見いだした。以上、Cdは骨芽細胞系においてGalNAc-T3遺伝子の転写誘導を介してFGF23の分子内切断を抑制し、骨でのFGF23産生・分泌を促進することが示された。これがCd投与時に見られた腎障害及びそれに引き続いて起こる骨軟化症の発症に繋がる可能性が示唆されることから、Cd障害の早期バイオマーカーとしての有効性とともにAhRを標的とした新たな治療法確立の可能性が期待される。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 41.1 (0), S2-1-, 2014
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205548731648
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- NII論文ID
- 130005468869
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可