ミトコンドリア品質管理に対するトリブチルスズの影響

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  • Effect of tributyltin on mitochondrial quality control

抄録

トリブチルスズ(TBT)はもともと漁業用防汚剤として使用されていたが、現在では有害性が指摘され特定化学物質に指定されている。nMレベルのTBTの作用としてPPAR/RXRを介したゲノム作用が知られている。我々は、これまでにヒト胎児性癌細胞株NT2/D1を用いたメタボローム解析により、TBTの新規非ゲノム作用として解糖系やミトコンドリア・イソクエン酸脱水素酵素 IDH3の阻害、ATP産生の低下を明らかにしてきた1, 2)。ミトコンドリアは分裂・融合のダイナミクスにより制御されることが知られていることから、本研究では、ミトコンドリア品質管理機構に焦点を当ててIDH3を介したTBT毒性作用の解析を行った。<br>まず、100nMのTBT曝露によりミトコンドリア分裂の亢進が認められた。ミトコンドリア融合マーカーmitofusin(Mfn)の発現を検討したところ、Mfnタンパク質の有意な減少が認められた。Mfnの減少はプロテアソーム阻害剤MG132処理によって回復したことから、ユビキチン-プロテアソーム系による蛋白分解が示唆された。次に、TBTによるミトコンドリア品質低下がIDH3によるかどうかを明らかにするために、IDH3活性阻害作用を有するアピゲニンの作用を調べた。アピゲニン処理によりTBTと同様にIDH3活性が阻害され、ミトコンドリア分裂の亢進およびMfnの分解が認められた。さらに、αケトグルタル酸アナログであるDMKG前処理により、TBTによるミトコンドリア品質低下の回復が認められた。<br>以上の結果から、ヒト胎児性癌細胞において、低濃度TBTによる毒性作用はIDH3を介したミトコンドリアの品質低下による可能性が示唆された。<br>参考文献 <br>1) Yamada et al., Metallomics. 2013, 5, 484-491 <br>2) Yamada et al., Sci. Rep. 2014, 4, 5952

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  • CRID
    1390001205549292032
  • NII論文ID
    130005483626
  • DOI
    10.14869/toxpt.42.1.0_p-61
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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