ラット腎臓内ウラン濃集部の局在量、化学形および組織病理変化の経時観察

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タイトル別名
  • Time course of levels and chemical form of uranium and pathological changes in kidney of rats exposed to uranium acetate

抄録

【はじめに】<br> 本格化する福島原発廃炉作業では溶融した燃料近くの汚染水や廃棄物等の処理における有事に備え、関連核種の生体影響に関する科学的知見の整備が求められている。中でもウランは腎障害を引き起こすことが知られている。これまでのラットを用いた検討では、投与後早期には腎近位尿細管上皮に投与量の500倍以上に匹敵するウラン濃集部が散在することが示されている。ウランはα線核種でもあることから、ウラン濃集部の残存による将来的な晩発影響も懸念される。そこで本研究では、ウランを投与したラット腎臓におけるウラン濃集部の動態を尿細管障害回復期まで検討した。<br>【実験】<br> Wistar系雄性ラット(10週齢)に0.5 mg/kgの酢酸ウラニルを背部皮下に投与した。投与後6週間まで経時的にラットを解剖し腎臓を摘出した。一方の腎臓は中性緩衝生理ホルマリンで固定し、パラフィン切片を作成して組織病理解析を行った。もう一方の腎臓上部から凍結切片を作成し(10 µm厚)し、高輝度光科学研究センター放射光施設SPring-8にてマイクロSR-XRFによる分布解析とマイクロXAFS測定による化学状態解析を行なった。また誘導結合プラズマ質量分析によりウラン濃度を測定した。<br>【結果・考察】<br> ウラン投与6週間後、腎臓の平均ウラン濃度は0.680 ± 0.279 µg/g であり、投与後1日目の7%程度まで低下していたが、下流部位近位尿細管(S3)領域では腎臓平均ウラン濃度の1000倍以上のウラン濃集部が検出された。ウラン濃集部のサイズはS3上流領域よりも下流領域で大きい傾向があった。またS3領域では投与後6週間を経ても再生および脱落尿細管が認められ、ウラン影響が残存することが考えられた。濃集部の共存元素組成や化学形についても合わせて報告する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205549341696
  • NII論文ID
    130006581845
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_o-26
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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