重金属曝露を可視化したミジンコの作製
書誌事項
- タイトル別名
-
- Production of transgenic Daphnia for heavy metal detection
抄録
生態毒性試験において用いられる環境指標生物の中でもオオミジンコは魚類や藻類とならんで比較的汎用されている生物種であるが、従来の主たるエンドポイントは生死や産仔数であり、生物影響があった場合にもどのような影響があったのかを簡便に検出する手法がなかった。環境水の変化に応答する遺伝子の制御領域と緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を融合させ、オオミジンコに導入できれば、環境水の変化を蛍光タンパク質の発現で検出が可能になる。このためには遺伝子操作技術を効率的に発展させ、高い自由度で遺伝子操作可能な技術の開発が必要である。我々はすでにオオミジンコに遺伝子を導入する技術を世界に先駆けて開発していたがこの技術をもとにさらにTALENやCRISPER/Cas9を用いて遺伝子破壊法だけでなく、レポーター遺伝子をふくめて新規な遺伝子の導入法の開発に成功した。<br> 本研究では、一連の遺伝子編集技術とレポーター遺伝子を用いて重金属曝露を可視化することを試みた。まずミジンコ(Daphnia magna)のゲノムデータベースから3種類のメタロチオネイン遺伝子(MT-A,B,C)を同定した。これらのうちMT-Aが重金属曝露により最も高い応答性を示したことから、MT-A遺伝子のプロモーター領域を単離し、その制御下にレポーター遺伝子としてGFPタンパク質をコードする遺伝子を有するキメラ遺伝子を作製した。開発した遺伝子編集法により、このキメラ遺伝子をミジンコに導入すしトランスジェニック系統を得ることができた。このトランスジェニックミジンコに重金属を1時間曝露することにより亜鉛(160 µg/L)、銅(16 µg/L)、カドミウム(100 µg/L)などを検出することができ、これらの感度は通常の試験法のEC50値よりもはるかに高かった。<br> 近年、事業所排水や環境水の管理手法としてWET (Whole Effluent Toxicity: 全排水毒性)試験が提唱されてきているが、WETにおいて影響が見られた場合に必要な一連の毒性同定評価(Toxicity Identification Evaluation: TIE)などにおいても、こうした生態影響を可視化できるトランスジェニックミジンコは有用になると思われる。
収録刊行物
-
- 日本毒性学会学術年会
-
日本毒性学会学術年会 44.1 (0), O-22-, 2017
日本毒性学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205549347840
-
- NII論文ID
- 130006581851
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可