マウス肝細胞-腹腔マクロファージ共培養系におけるグルタチオン枯渇のジクロフェナク毒性に対する影響

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タイトル別名
  • Diclofenac-induced toxicity in glutathione-depleted isolated murine hepatocytes co-cultured with peritoneal macrophages

抄録

【目的】カルボキシ基を含有する薬物による特異体質性肝障害発症の原因として,代謝により生成したアシルグルクロン酸抱合体などの反応性代謝物のタンパク質との共有結合体生成の関与が指摘されている。Diclofenac (DIC)のアシルグルクロン酸抱合体 (DIC-AG)は肝障害の原因となり,その発症に対する免疫系の寄与あるいはglutathione (GSH)との関連は考察されてきたが,これらを組み合わせた状況下でのDIC代謝と毒性発現の関連については不明な点が多い。そこで,本研究では,マウス肝細胞 (Hep)と腹腔マクロファージ (PM)の共培養系を用い,GSH枯渇時の代謝物産生と毒性発現について検討を行った。<br>【方法】5週齢雄性ICRマウスよりHepおよびPMを採取し,Hep/PM (1 : 0, 1 : 0.1, または1 : 0.4)を共培養した。GSH枯渇はL-buthionine sulfoximine (BSO)を0.1, 0.3, 1, 3または10 mMで22時間処理させた。DIC代謝の検討では,0.1, 0.3または1 mMでDICを添加した後の培地および細胞内DIC,DIC-AGおよび共有結合体量を測定した。細胞毒性の評価にはLDH漏出量,ATP含量およびカスパーゼ活性を用いた。In vivo試験では,DIC (50 mg/kg, i.p.)単独群,BSO (500 mg/kg, i.p.)併用群,LPS (10 mg/kg)併用群,BSOおよびLPS併用群の血漿および肝臓内DICおよびDIC-AG濃度をHPLC法で測定した。<br>【結果および考察】HepにおいてBSO濃度依存的にGSHが枯渇し,GSH枯渇の程度に応じて培地中および細胞内DIC-AG濃度および共有結合体量の有意な上昇がみられた。また,GSH枯渇時にLDH漏出量の有意な上昇が認められ,DICによる毒性はDIC-AGおよび共有結合体量と関連することが示唆された。共培養においてもHep単独と同様にGSH枯渇時に培地中DIC-AG濃度が上昇し,細胞内のATP含量は共培養 (1 : 0.4)のみ有意な低下がみられた。1 : 0.4は炎症時の比率とされ,炎症時にDIC誘発肝毒性が増強する可能性が示された。In vivo試験で血漿中および肝臓内DIC-AG濃度を検討したところ,in vitroと同様にBSOおよびLPS併用群でDIC単独群と比べ顕著に上昇した。以上より,GSH枯渇がDIC-AGの細胞内蓄積を促し,PMにより毒性発現が増強することが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205549377792
  • NII論文ID
    130006581860
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_o-16
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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