酵母及びヒト細胞の亜ヒ酸毒性発現機構における転写因子Mig1及びWT1の役割

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タイトル別名
  • Possible role of transcription factors, Mig1 and WT1, in arsenite-induced cytotoxicity in yeast cells and human cells

抄録

【目的】我々は,真核生物モデルとして有用な出芽酵母を用いて,ヒ素化合物の1つである亜ヒ酸の毒性発現機構の解明に取り組んでいる。これまでの検討により,欠損によって酵母の亜ヒ酸感受性を亢進させる細胞内因子として,糖代謝に関わる転写因子Mig1を同定している。ヒトにおいてはMig1と相同性が高い転写因子としてWilms tumor gene(WT1)が知られているが,亜ヒ酸毒性との関係性については検討されていない。本研究では,酵母及びヒト子宮頸癌由来HeLa細胞を用いて,亜ヒ酸毒性発現機構における転写因子Mig1/WT1の役割について検討した。<br>【方法】酵母及びヒト子宮頸癌由来HeLa細胞における各遺伝子の発現レベルは,real-time PCR法によって測定した。<br>【結果および考察】我々は,亜ヒ酸が酵母のペントースリン酸経路関連因子の発現を抑制することによって核酸合成を低下させ,その結果として細胞毒性を発現することも明らかにしている。そこで,Mig1とペントースリン酸経路との関係性を調べたところ,Mig1の欠損がペントースリン酸経路関連遺伝子の発現レベルを有意に低下させることが明らかとなった。亜ヒ酸がMig1を不活性化することも確認していることから,亜ヒ酸はMig1依存的な転写機構を抑制することによって,ペントースリン酸経路を抑制して,細胞毒性を発現している可能性が考えられる。次に,ヒト子宮頸癌由来HeLa細胞を亜ヒ酸で処理したところ,亜ヒ酸の処理濃度依存的にWT1の標的遺伝子(GAS1,QPRT)の発現レベルが低下することが判明した。また,亜ヒ酸処理によってペントースリン酸経路関連因子(RPIA,TKT)の発現レベルも低下することが確認された。したがって,ヒト細胞においても亜ヒ酸が転写因子WT1の活性低下及びペントースリン酸経路の抑制を引き起こすと考えられる。現在,ヒト細胞におけるWT1とペントースリン酸経路との関係性について検討中である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205549622912
  • NII論文ID
    130006581949
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_p-131
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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