c-Cbl依存的なEGFR分解システムに対する亜ヒ酸の影響

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  • Effect of arsenite on c-Cbl-dependent EGFR degradation system

抄録

【目的】バングラデシュなどの東アジア諸地域では無機ヒ素を含む地下水の飲水による慢性ヒ素中毒が発生しており、本中毒により多臓器にがんが発生する。しかしながらヒ素化合物によるがんの発生機序に関してはよくわかっていない。一方、上皮成長因子受容体(EGFR)の過剰な活性化は細胞のがん化を誘発することが知られており、EGFRの活性化抑制因子としてユビキチンリガーゼのc-Cblが知られている。そこで本研究では、ヒ素化合物による発がん機序を明らかにすることを目的として、亜ヒ酸がc-Cblのユビキチンリガーゼ活性を阻害することで、EGFRの分解が抑制されるのではないかと仮説を立て研究を行った。<br>【方法】細胞:COS-7細胞、HEK293細胞、A549細胞を使用した。タンパク質発現:western blot法で検討した。遺伝子導入:polyfectを用いたlipofection法で導入した。<br>【結果】COS-7細胞にEGFR遺伝子とc-Cbl遺伝子を導入し、24時間後にEGFを添加(15、30、60分)した。その結果、c-Cblを導入していないCOS-7細胞ではEGF添加後のEGFR量に変化は無かったが、c-Cblを導入したCOS-7細胞ではEGFの添加によりEGFRのタンパク質量は顕著に減少した。この結果から、EGF依存的なEGFRの分解にc-Cblが関与していることがわかった。本システムに対し、亜ヒ酸の影響を検討した。EGFRとc-Cblの遺伝子を導入した12時間に、亜ヒ酸を添加し12時間さらに培養した。その後EGFを30分間添加した細胞を使用してEGF量を測定したところ、EGFによるEGFRの分解作用が亜ヒ酸により阻害された。現在、内在性のEGFR量が少ないHEK293細胞、c-Cbl量が少ないA549細胞に、c-CblおよびEGFRの安定的高発現細胞を樹立し、これらの細胞においてもEGF依存的なEGFRの分解を亜ヒ酸が抑制するかについて検討を進めている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205549643776
  • NII論文ID
    130006581986
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_p-142
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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