光照射における紫根染料による絹染色布の変退色作用スペクトル

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タイトル別名
  • Action spectrum of fading of Sikonin under UV and Visible Radiation

抄録

目的 本研究は、天然染料を対象としてその光退色における照射波長の影響を作用スペクトルとしてとりまとめることを目的としている。本研究では、可視光線と紫外線の照射にかかわかる紫根の耐光性の波長依存性を明らかにすることに主眼をおいた。こうした結果は、伝統文化財の保存に有用な情報となりうる。実験方法 実験に使用した布は植物染料である紫根による絹染色布である。染料は伝統的手法に従い、紫根から染料を抽出し、3回の染色工程をへて試料布を調製した(松本宗久:日本色彩大鑑,河出書房)。日本分光製モノクロメーターを用いて試料布に光照射を行った。波長ごとにエネルギー量を測定した。おおよそ16nmごとに実験した。波長範囲は、220から700nmである。一定照射ごとに反射スペクトルを測定し、色彩測定を行った。ミノルタ製分光測色計(CM‐3700d)を用いた。変退色の評価には、L*a*b*表色系による色差式を用いた。実験結果および考察 各波長における照射エネルギーが一定の条件での変退色特性をとりまとめた。ここでは125kJ/m2/nmでの結果に注目すると、波長246nmにおいて変退色はピーク値ΔE17に達し、波長の増加につれ変退色レベルは低下するが、また294nm付近で、もうひとつのピーク値としてΔE14が認められた。さらに、長波長になるにつれ、ほぼ単調に変退色のレベルは低下する。波長342nmおよび波長404nmでショルダーが認められている。本研究の結果は、波長が短くなるにつれて、単調に変退色が著しくなるわけではないことを示している。 一方、太陽光強度の分光特性との関連から、本研究はA領域紫外線での紫根の変退色が著しいことと共に、可視光領域の400から450nmにおいても変退色の進行が認められている。こうした紫根の作用スペクトルは、太陽が照射する可視光下で紫根の耐光堅ろう度が充分でないことを説明しうる特性と言える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205558319232
  • NII論文ID
    130006956749
  • DOI
    10.11428/kasei.56.0.65.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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