肩関節の可動域と上衣のゆとりとの関連

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タイトル別名
  • The relationship between the active range of shoulder joint and the ease of jacket

抄録

目的:本研究は肩関節の可動域との関連から,高齢女性の前あき上衣の着衣動作が困難となるメカニズムを明らかにし,さらにこれを解消するために必要なゆとりの位置と量を明らかにすることを目的とした.<BR>方法:67~97歳までの高齢女性46名の肩関節の自動可動域と構造の異なる3種類の上衣の着衣の所要時間,上肢の位置関係との関連について検討した.さらに,必要最低限度のゆとりの量と位置を明らかにするため,高齢女性を模して,肘屈曲時の水平伸展運動の可動域を平均-9度,外転運動の可動域を平均110度に制限した若年女性12名を対象として,上衣の背面の2か所のプリーツの位置と幅を変化させて着衣の所要時間を比較した.<BR>結果:外転運動の可動域が120度以下の被験者は,146度以上の被験者に比べて‘後から通す方の袖ぐりを探る時間’が有意に長いことが明らかとなった.肩峰点,肘点,手首点の位置関係を検討した結果,高齢女性は後から通す方の袖ぐりに手首を入れる際,肘を屈曲して手首を肩より後ろへ引く動作(肘屈曲時の水平伸展運動)が困難であるため,背面のゆとりが少ない場合,肘を外転させて手首を頸の後ろの方へ移動させていた.外転運動の可動域が小さい被験者はこの動作が困難なため,所要時間が長くなると言えた.高齢女性のように肘屈曲時の水平伸展運動と外転運動の可動域が小さい場合,袖ぐりの底の高さを含んでそれより上部に12~18cmのゆとりを入れると着衣しやすいと言えた.これに対して,外転運動の可動域のみが小さい場合には袖ぐりが広い構造や後ろ身頃に6cmのゆとりがあれば着衣しやすいことから、身体機能に応じた着衣のためのゆとりの設計が必要であると言えた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205558332032
  • NII論文ID
    130006956761
  • DOI
    10.11428/kasei.60.0.82.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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