α-トコトリエノールの体内動態

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タイトル別名
  • Distribution of α-tocotrienol in plasma lipoproteins of rats

抄録

【目的】α-トコトリエノール(α-Toc3)は、小腸で吸収された後、カイロミクロン(Chy)によって肝臓に取り込まれる。しかし、α-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)との低い親和性により、肝臓から組織への輸送は少なく、大半が尿中へ排泄されると考えられている。一方、当研究室では、これまでに皮膚および脂肪組織中に、α-Toc3が高濃度に取り込まれることを明らかにしている。このことは、Chyに取り込まれたα-Toc3がリポタンパク質リパーゼ(LPL)の作用を受け、直接末梢組織へ運ばれる経路の存在を示唆する。そこで今回、α-Toc3の体内動態について検討を行った。【方法】3週齢のWistar系雄ラットをビタミンE欠乏食で4週間飼育した。その後α-Toc3または、α-トコフェロール(α-Toc)10mgを含むエマルジョンを2ml胃内投与し、1、3、6時間後の血漿を採取した。血漿は超遠心分離法により、Chy、VLDL、LDL、HDL1、HDL2に分離し、各画分中のα-Toc3濃度とα-Toc濃度を測定した。【結果】Chy中のα-Toc3濃度は、投与後1時間で最高値を示し、3時間後までに急激に低下した。VLDL、HDL1中のα-Toc3濃度は、投与後3時間、またLDL、HDL2中のα-Toc3濃度は投与後6時間まで上昇を続けたが、その変化はChyに比べ非常に緩やかであった。【結論】α-Tocの結果と比較して、投与後1時間のChy中α-Toc3は急激に上昇し、3時間では低下した。また、その他のリポタンパク質画分中α-Toc3濃度の上昇は緩やかで、その値はα-Tocより低かった。これらの結果は、α-Toc3が肝臓に取り込まれる前に、直接組織に取り込まれるといった別の経路の存在を示唆させる。そこで、皮膚、脂肪組織等の各組織中のα-Toc3濃度についても現在検討を加えている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205559236608
  • NII論文ID
    130006957500
  • DOI
    10.11428/kasei.55.0.162.1
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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